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文献詳細

雑誌文献

総合診療34巻9号

2024年09月発行

文献概要

特集 今伝えたいクリニカル・パール—つくり方、使い方、活かし方 【継承された“とっておきパール”】

❻prepared mind

著者: 瀧宮龍一1

所属機関: 1諏訪中央病院 総合診療科

ページ範囲:P.1044 - P.1045

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◦心房細動患者の臓器塞栓症を見たら、フルで神経診察せよ
 研修医時分のことである。かかりつけのない50代女性が、左腰痛で早朝に救急搬送された。尿管結石を疑ったが、モニターを付けると心房細動である。“これは”と思い造影CTを撮ると、予想どおり左腎梗塞が見つかり、入院でヘパリンを開始した。しかしその夜、病棟で看護師が本人確認すると、自分の名前が言えなかったのである。すぐに頭部MRIを撮ると、左脳梗塞で運動性失語をきたしていた。わずかに出血も合併しており、ヘパリンが中止になった。振り返ってみると、初診時から、麻痺はないが自分の住所を話しづらそうにしている様子があった(が、気にも留めていなかった)。
 心房細動患者の臓器塞栓症をみたら、ほかにも塞栓症を合併しているはずと思って、注意深く診察し直す必要がある。それが脳梗塞、特に皮質動脈の塞栓であれば、高次脳機能のみ障害され、麻痺や呂律不良など典型的な脳梗塞症状を欠くこともある。このような症例には普段評価しない失語・失行・失認といった高次脳機能まで神経診察する必要がある。出血性梗塞にヘパリンを開始してしまった痛恨の1例だが、上記パールが深く刻まれた。

参考文献

1)Hagan PG, et al : JAMA 283(7) : 897-903, 2000. PMID 10685714
2)Castelli R, et al : Vas Med 8(4) : 257-261, 2003. PMID 15125486
3)Linn FH, et al : J Neurol Neurosurg Psychiatry 65(5) : 791-793, 1998. PMID 9810961

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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