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雑誌目次

雑誌文献

循環器ジャーナル65巻3号

2017年07月発行

雑誌目次

特集 不整脈診療—ずっと疑問・まだ疑問

序文

著者: 村川裕二

ページ範囲:P.396 - P.397

 「この領域は魅力がある」けれど,「あの領域は面白くない」というのはよくあることです.
 ひとつの決め手は「治療法があるか」ということ.

Ⅰ.不整脈診療のベーシック

心房細動のトライアル:「絶対の3つ」と「大事な3つ」

著者: 髙橋尚彦

ページ範囲:P.398 - P.402

Point
・フレイルな患者に対しては抗不整脈薬によるリズムコントロールよりレートコントロールのほうが安全である.
・レートコントロールにおいて徐脈,100/分を超える頻脈は良くない.目標安静時心拍数は心不全合併の有無にかかわらず80〜90/分程度である.
・植込み型心電計で潜因性脳梗塞患者の心房細動検出率が上昇する.

短い心房細動は予後に影響しないのか

著者: 蜂谷仁

ページ範囲:P.403 - P.408

Point
・基本的に持続時間の短い心房細動では血栓塞栓症に関する予後は良好と考えられる.
・“短い心房細動”患者においても,HATCHスコアが高い患者では持続性心房細動に移行しやすいため注意深い経過観察が必要である.

心不全と心房細動とβ遮断薬

著者: 小川正浩

ページ範囲:P.409 - P.415

Point
・心不全と心房細動はしばしば共存し,一方が一方を増悪させ,心不全の増悪,心房細動持続の長期化,血栓塞栓症や突然死を引き起こしやすく,生命予後を悪化させる.
・β遮断薬は,心不全の治療薬として,またAFリズムおよびレートコントロール薬として有用であるが,慢性化したAFのレートコントロールは必ずしも心拍数を厳格に低下させる必要はなく,症例により使い分けや用量調節することが肝要である.
・心不全合併心房細動に対するカテーテルアブレーションは,薬物治療に比べて洞調律維持,予定外入院の減少や予後改善効果が見込まれる.

AF-CHFからわかること

著者: 増田慶太 ,   関口幸夫

ページ範囲:P.416 - P.422

Point
・心不全を合併した心房細動では,リズムコントロールとレートコントロールで臨床的アウトカムに差はない.
・まずは心不全治療と抗凝固療法を行い,そのうえでリズムコントロールとレートコントロールを組み合わせながら治療を行っていく.
・洞調律化を目指してリズムコントロールを積極的に試みるが,効果がない場合はレートコントロールに早めに切り替える.

心拍数が安定した心房粗動はそのままでいいのか

著者: 二宮雄一

ページ範囲:P.423 - P.430

Point
・心房粗動は,250〜350/分の心房興奮頻度の規則正しい粗動波を特徴とする上室頻拍と定義される.
・心拍数が安定している心房粗動においても,心機能を維持するために心房の担っている機能は可能な限り温存することが望ましい.つまり,洞調律化を狙うべきであると考える.
・「通常型」心房粗動であれば,解剖学的峡部のアブレーションで90%程度の高い成功率で治癒を期待できる.

心室不整脈のトライアル:「絶対の3つ」と「大事な9つ」

著者: 橋田匡史 ,   吉岡公一郎

ページ範囲:P.431 - P.439

Point
・心室不整脈治療は,患者の不整脈起源となった病態を把握したうえで,治療法を選択することが重要である.
・心室不整脈を対象とした様々な臨床試験を通じて,心疾患患者の生命予後の改善を図ることが重要である.

ペースメーカはなにが新しくなったのか

著者: 三橋武司

ページ範囲:P.440 - P.445

Point
・不必要な右室ペーシングは心房細動の発生や心不全入院のリスクを増やすことがわかり,その頻度を下げる工夫がされてきている.
・ペースメーカ植込み患者に無症候性心房細動の合併が予想外に多く,予後を悪化させている.現在,遠隔モニタリングなどを用いていかに対処するかを模索中である.
・MRI対応,リードレスペースメーカなど新しいハードウェアが開発されている.

AEDは役に立っているか

著者: 三田村秀雄

ページ範囲:P.446 - P.452

Point
・市民によるAED電気ショックで,これまでに3,000人以上の心停止目撃例が救命されている.
・AEDの対象は心室細動であり,しかもほぼ10分以内の電気ショックが求められる点でその有用性に限界がある.
・AEDを戦略的に設置し,迅速に現場に届ける工夫と,市民への教育が有用性をさらに高める鍵となる.

Ⅱ.抗凝固療法を考える

「低リスクの心房細動でも除細動前に抗凝固療法」は合理的か?

著者: 奥山裕司

ページ範囲:P.453 - P.456

Point
・低リスクかつ短時間持続の心房細動では抗凝固療法が不要である可能性はあるが,十分なエビデンスはない.
・真に短時間持続かどうかは臨床例ではなかなかわからない(症状からでは確定できない).
・医療行為として洞調律化を図る際には前後の抗凝固療法を慎重に検討すべきである.
・今後ガイドラインの補強あるいは修正を行える質の良い臨床研究が求められる.

CHA2DS2-VAScスコアだけでは決められない

著者: 加藤律史

ページ範囲:P.457 - P.462

Point
・CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアによって抗凝固療法の適応を判断するのが基本になります.
・CHA2DS2-VAScスコアが低値でも抗凝固療法を考慮しなければいけない病態あるいは社会的適応がある一方で,CHA2DS2-VAScスコアが2点以上でも出血リスクのほうが,抗凝固療法による利点を上回ると考えられる場合には抗凝固療法を控える場合もあります.
・近年,CHA2DS2-VAScスコアに代わるあるいは修正した新しいリスク要因も報告されています.

DOACはどれも同じか

著者: 小谷英太郎

ページ範囲:P.463 - P.472

Point
・DOACとワルファリンは,目的は同じだが作用機序に大きな違いがある.
・トロンビン阻害薬と第Ⅹa因子阻害薬は,臨床的には大きな差はないが,ダビガトランには中和薬がある.
・第Ⅹa因子阻害薬間の有効性・安全性に大きな差はない.

Ⅲ.心室性不整脈

心室期外収縮が右室流出路起源か左室流出路起源かを区別する理由

著者: 神田茂孝

ページ範囲:P.473 - P.480

Point
・下壁誘導で下方軸を呈する流出路起源の特発性心室期外収縮は,その心電図波形から発生起源に特徴的な心電図所見を認めることが多い.
・アブレーション施行前に心室期外収縮の12誘導波形から右室流出路起源か左室流出路起源かを推定しておくことは治療方法や効果に大きくかかわってくるため,その綿密な検討が要求される.

べラパミル感受性心室頻拍は奥深い

著者: 野上昭彦

ページ範囲:P.481 - P.493

Point
・右脚ブロック型・上方軸VTの左脚後枝領域型が最も多い.
・プログラム刺激で誘発できないことも少なくないが,非リエントリー性脚枝VTと鑑別するには,発作時のべラパミル静注の効果が重要となる.
・乳頭筋近傍の脚枝起源頻拍も存在することがわかってきた.

Brugada型心電図に出会ったら

著者: 小島敏弥

ページ範囲:P.494 - P.500

Point
・Brugada型心電図についてはcoved型に注目し,失神の既往,45歳以下の突然死の家族歴といったリスクファクターコンビネーションを基に心臓電気生理検査,植込み型除細動器(ICD)の適応を判断する.
・Brugada症候群の治療として,ICDのほか,薬物療法,カテーテルアブレーションといった補助治療が挙げられるが,その効果と長期予後に関しては不明な点が多く,今後の課題である.

一次予防としての植込み型除細動器

著者: 佐藤弘典 ,   畔上幸司

ページ範囲:P.501 - P.507

Point
・一次予防としての植込み型除細動器(ICD)の適応は国内外で若干異なるが,これは各国における心臓突然死の特性やエビデンスの解釈の差異と関連している.
・本邦では一次予防としてのICDの割合が低く,虚血性心疾患においてその程度は顕著である.
・完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)の今後の役割に関し,一次予防目的のICD治療における動向が注目される.

Ⅳ.抗不整脈薬のヒント

夜間好発の心房細動に抗コリン作用をもつ抗不整脈薬を使う根拠はあるか

著者: 小松隆

ページ範囲:P.508 - P.516

Point
・心房細動の原因を検索することは病態把握のみならず,治療戦略を決定するうえでも重要である.
・好発時間帯からみた薬剤選択法により,従来の経験的投与法や試行錯誤的投与法に比し治療効率の良い薬剤選択が可能となる.
・抗不整脈薬の投与は,患者背景のリスク/ベネフィットのバランスを配慮して行うことが重要である.

Ⅰc群抗不整脈薬の昨日と今日

著者: 木村友紀 ,   住吉正孝

ページ範囲:P.517 - P.522

Point
・Ⅰc群抗不整脈薬フレカイニドはCAST試験で心筋梗塞後の患者の予後を悪化させた.
・その後Ⅰc群抗不整脈薬は基礎心疾患のない心房細動(lone AF)で早期除細動・再発予防に対する有効性が評価された.
・最近ではフレカイニドのCPVTへ効果が注目され,適応が広がっている.

ランジオロールを使う

著者: 小林茂樹

ページ範囲:P.523 - P.528

Point
・超短期作動型β1遮断薬ランジオロールの特性は,低用量で心抑制が小さく,徐拍効果が大きいことである.
・低用量ランジオロールは心不全を合併した頻脈性心房細動の心拍数コントロールに有用である.
・ランジオロールは,細胞内Ca2+ハンドリングを是正するため,心不全を合併した心室性不整脈の抑制,予防に有効である.

Ⅴ.心房細動アブレーションの展望

テクニカルな面からみた心房細動のカテーテル・アブレーション

著者: 慶田毅彦

ページ範囲:P.530 - P.536

Point
・治療の基本は肺静脈の隔離である.
・持続性心房細動において,心房の線状焼灼やCFAEアブレーションなどの追加焼灼が試みられてきた.
・最近のSTAR AFⅡという無作為割り付け試験では,追加焼灼のメリットは確認されなかった.
・しかし,この試験で結論が出たわけではなく,今後どの方法を用いるかさらなるエビデンスの構築が必要である.

アウトカムからみた心房細動のカテーテル・アブレーション

著者: 深水誠二

ページ範囲:P.537 - P.543

Point
・本邦における心房細動アブレーションの全国レジストリー(J-CARAF)によると,初回アブレーション後1年間の心房細動/粗動/頻拍の非再発率は発作性心房細動で70%程度,持続性/長期持続性心房細動で60%前後である.
・薬剤抵抗性の有症候性発作性心房細動患者に対するアブレーション治療は抗不整脈薬治療に比較しQOLを改善させ,その効果は長期にわたり持続する.
・心不全を合併する持続性心房細動に対する無作為化前向き試験(AATAC試験)で,心房細動アブレーションはアミオダロン治療と比較し非再発率が高く,予定外入院率および死亡率が低いことが示された.
・心房細動アブレーションを受けた患者では受けていない患者に比べて有意に死亡率・脳卒中発症率が低く,心房細動のない対照群の患者と発症率が同等であったとの報告もある.

AFアブレーション後に抗凝固薬から逃れられるか?

著者: 山内康照

ページ範囲:P.544 - P.550

Point
・アブレーション術後に心房細動が再発した症例の約1/3は,術後1年以降の再発であり,遠隔期の心房細動再発は十分あり得る.
・アブレーション術後に心房細動が再発した際,無症候性の再発である場合も多くフォローアップにあたっては留意する必要がある.
・血栓塞栓症リスクが低いCHADS2スコア1点以下の患者においては,術後遠隔期には抗凝固療法の中止が可能であるが,中止基準や中止時期については症例ごとに異なってくるのが現状である.
・血栓塞栓症リスクが高いCHADS2スコア2点以上の患者においては,術後洞調律がある程度維持されていても抗凝固療法の半永久的な継続が望ましい.

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次号予告

ページ範囲:P.551 - P.551

奥付

ページ範囲:P.552 - P.552

基本情報

循環器ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2432-3292

印刷版ISSN 2432-3284

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