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文献詳細

雑誌文献

循環器ジャーナル66巻1号

2018年01月発行

文献概要

特集 循環器診療 薬のギモン—エキスパートに学ぶ薬物治療のテクニック

序文

著者: 坂田泰史1

所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学

ページ範囲:P.4 - P.5

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 心臓はやはりポンプであり,拍出し臓器に酸素と栄養を届けることが最も重要な任務である.よって,心臓病治療にはデバイスの活躍が大きな地位を占めてきた.経皮的冠動脈インターベンション,ペースメーカー,心臓再同期治療,植込み型補助人工心臓はもちろんのこと,近年structural heart disease(SHD)の分野にまで新しいデバイスが開発され,経皮的に大動脈弁置換,さらに僧帽弁治療も行えるようになっている.しかし,一部の急性疾患を除くと慢性的に病状が進行した後に行われるものであり,予防的な効果,また増悪を防ぐ効果にはやはり各種薬物治療が現在でも必要である.よって,薬物治療のテクニックを学ぶことは,車の両輪としてデバイス治療を習得することと同様引き続き重要である.
 この特集では,それぞれの病態を診療するときに現場で聞こえてくるクリニカルクエスチョンを集め,エキスパートに回答いただくという形式をとっている.心不全では心筋保護薬の使い方のみならず,難しいとされる強心薬,利尿薬の使い方に言及している.これからの循環器医は,このような予後を改善しないと考えられている治療薬をいかに「かっこよく」使えるかが求められているのである.高血圧治療において,近年新薬が発売されていないことは,必ずしも病態が解決されたことを意味しない.むしろ循環器医全体が広く精密な降圧治療を行う時代が来たと考えるべきである.虚血性心疾患について,デバイス治療はかなり完成度が高くなっているが,その時代の新しいデバイスに応じて抗血栓療法の強弱,期間を検証し続けなければいけない.またSHD治療は日本における薬物治療サポートは現在進行形である.この分野は今後多くの日本でのエビデンスを必要とするであろう.不整脈治療において,現在最も多くの症例が積み重ねられているのは心房細動アブレーションである.この新しいデバイスに応じた抗凝固療法の薬剤選択,強弱,期間も日本におけるエビデンスが待たれている.しかし,抗不整脈薬も決して不要ではなく,患者さんに合わせたオーダーメイド投薬が行われれば今でも役に立つことはあるであろう.そして,現在新しい薬剤が最も多く世に出てきている肺高血圧治療については,早期診断・治療の枠組みのなかでコストを意識した投薬戦略が求められている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2432-3292

印刷版ISSN:2432-3284

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