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文献詳細

雑誌文献

循環器ジャーナル66巻3号

2018年07月発行

文献概要

特集 肺高血圧症Cutting Edge

序文

著者: 渡邉裕司12

所属機関: 1浜松医科大学 2国立国際医療研究センター 臨床研究センター

ページ範囲:P.314 - P.315

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 肺高血圧症のなかで,肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension;PAH)は慢性進行性の肺血管増殖を特徴とし,極めて不良な予後経過をたどる難治性疾患と考えられてきました.しかし,プロスタサイクリン製剤,エンドセリン受容体拮抗薬,PDE5阻害薬といったPAH治療薬によって患者の予後が大きく改善していることを臨床現場の医療者は実感しています.さらに最近では可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬やIP受容体アゴニストも登場し,その効果が期待されています.一方,新規治療薬の有効性を検証したランダム化比較試験(RCT)の多くは,主要評価項目として6分間歩行距離を採用してきましたが,その妥当性は疑問視されはじめており,最近のRCTでは,イベント発現までの時間といった臨床アウトカムを反映するものが主要評価項目とされています.しかし,これらRCTで全死亡の改善を明確に示したPAH治療薬はほとんどありません.さらに,PAH治療薬を初期の段階から積極的に併用するup-front combination治療が注目されていますが,逐次追加療法sequential combination治療とup-front combination治療を比較したRCTはなく,単剤で十分効果が得られる患者が存在するのも事実であり,系統の異なる治療薬の使い分けについても,私たちは十分な根拠を持ち合わせていません.
 この特集企画では『肺高血圧症Cutting Edge』と題して,進捗著しい肺高血圧症の診断・治療に関して何がどこまで明らかになっており,何が未解明なのか,最先端の状況を,肺高血圧症のエキスパートの先生方に解説していただいています.5章からなる構成では,まず『総論』で世界および日本の肺高血圧症に対する取り組みが紹介され,第2章では肺高血圧症の発症に関して『何が原因か,なぜ原因となるのか?』,第3章では『診断のきっかけ,どんなサインが重要か?』,第4章では『内科的治療と外科的治療,そして将来の治療』,最後の第5章では『肺高血圧症のトピックスあるいはコントラバーシ』として,まだ議論の余地がある点については,それぞれの意見とその根拠を解説していただきました.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2432-3292

印刷版ISSN:2432-3284

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