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文献詳細

雑誌文献

循環器ジャーナル67巻3号

2019年07月発行

文献概要

特集 循環器疾患の画像診断—現状と進歩

序文

著者: 陣崎雅弘1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部放射線科学教室(診断)

ページ範囲:P.320 - P.321

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 CT,MRI,核医学などの非侵襲的画像診断は,1970年代から1980年代にかけて臨床現場で活用されるようになった.全身のなかでも,頭部と骨盤は動きがないので新しい技術を導入しやすい領域であった.1990年代から2000年代にかけて,多くの技術革新が行われ,動きのある心臓をはじめとする循環器領域にも応用されるようになってきた.循環器領域の画像診断は,動きの克服に加えて,形態,機能,虚血など多面的な評価が必要な領域であることから,常に多くの技術が結集されてようやく臨床応用に辿り着く感がある.技術の進歩の恩恵を最も受ける領域と言える.
 2000年代に始まったCTの多列化は,心臓CTの臨床応用を目指していたと言っても過言ではない.被ばく低減技術も心臓CTへの恩恵は大きく,近年では超高精細CTが登場し,冠動脈や末梢動脈病変の形態の診断能向上に貢献する可能性が高い.シミュレーション技術のFFRCTは虚血評価に大きく貢献することが期待できる.MRIは,臨床で使われるようになった当初から形態描出に使われてきたが,1990年代以降,ダイナミックスタディによる灌流画像,反転回復法を利用した遅延造影による虚血・梗塞評価が可能となった.また,2000年前後から定常状態グラディエントシーケンスが発達し,コントラストのよいcine画像や,呼吸ナビゲータと組み合わせたホールハート・イメージングによる冠動脈の3次元表示が可能となった.MRIは様々な撮像法を組み合わせることにより多様な情報を得ることができるため表現力の豊かさがあり,近年では心筋T1値,T2値や4D flowなど,新しい情報も追加できるようになっている.今後は,他モダリティーとの競合というよりも,遅延造影,心筋T1値,T2値,血流計測などのMRIから得られる独自の情報をいかに臨床に生かしてゆくか,という方向に進むと思われる.核医学は,長年にわたる虚血のエビデンスの構築があり,最も古くから活用されている検査法である.近年では,半導体検出器が登場し,より高分解能の画像が得られるとともに,少ない線量でも撮影可能になっている.核医学の魅力は,分子生物学等の発達により病態がより詳細に解き明かされ,新たに画像化すべき分野が増えた場合でも,薬剤合成技術を活用することで対応していく潜在力をもっていることである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2432-3292

印刷版ISSN:2432-3284

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