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雑誌目次

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循環器ジャーナル70巻3号

2022年07月発行

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特集 進化するカテーテルインターベンション—適応の広がりとデバイスの革新 序文

進化するカテーテルインターベンション—適応の広がりとデバイスの革新

著者: 安田聡

ページ範囲:P.346 - P.347

 高齢化が急速に進む本邦において,心臓血管領域の医療として中心的な役割を担っているのが「インターベンション」(intervention=間に入ること,介在)である.インターベンションは薬物による内科的治療と,手術による外科的治療の間に位置する治療法で,カテーテルを用いて患者にとって低侵襲に治療を行うことを可能とする.
 私自身,1989年国立循環器病研究センターでレジデントとして重症の狭心症患者を担当し,冠動脈インターベンション(当時はバルーン治療)の可能性を目の当たりにした.治療対象となる疾患は,当初の冠動脈領域にとどまることなく,頸動脈,大動脈,腎動脈,下肢と全身へと広がりを見せてきた.近年,特にカテーテルアブレーションによる不整脈治療,構造的心疾患(structural heart disease ; SHD)に対するインターベンションが目覚ましい進歩をとげてきた.生涯2回目の衝撃は,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の手技に立ち会ったときである.80歳を超える小柄な高齢女性が数時間の手技を経て症状が軽快し退院していく様子,症例の戦略を多職種で議論する様子を見て,この領域の進歩を実感した.その後も僧帽弁閉鎖不全のMitraclip,心室/心房中隔欠損,卵円孔開存に対するAmplatzer閉鎖術,心房細動による脳塞栓症の予防のための左心耳カテーテル閉鎖デバイスWatchmanなど,デバイスは開発が進み,本邦の臨床の現場に登場してきている.

Ⅰ章 総論

カテーテルインターベンション治療総論

著者: 伊苅裕二

ページ範囲:P.348 - P.352

Point
・治療の低侵襲化が進むなか,心臓血管領域ではカテーテルインターベンション治療が著しい進歩を遂げている.
・冠動脈疾患,構造的心疾患,末梢動脈疾患,脳血管・頸動脈疾患など,それぞれの領域で新たなデバイスによる治療法が開発されつつあり,今後の発展が期待される.

Ⅱ章 冠動脈インターベンション

最新のステント治療

著者: 上妻謙

ページ範囲:P.353 - P.359

Point
・薬剤溶出ステントを使用した冠動脈インターベンションの成績は経年的に向上している.
・急性冠症候群の末梢塞栓予防,石灰化病変,分岐部病変,慢性完全閉塞病変,再狭窄病変,透析患者,ステント内の新規動脈硬化が残された課題である.
・ステントストラットを薄くする,ステントのデザインを工夫する,アテレクトミー・イメージングデバイスなどを併用するなどによって成績改善の試みが続けられている.

新しいオートメーション機能を用いたロボット支援下PCI

著者: 石曾根武徳 ,   肥田頼彦 ,   森野禎浩

ページ範囲:P.362 - P.368

Point
・ロボットPCIは,術者の放射線被曝や身体的負担の低減,ミリメートル単位の精緻な動作が可能であり,患者の放射線被曝や造影剤投与量が少ないという利点がある.
・新しいオートメーション機能である“TechnIQ”は非常に利便性が高く,今後さらなる進化と発展が期待される.

特殊デバイス・アテレクトミーカテーテル

著者: 栗山根廣 ,   柴田剛徳

ページ範囲:P.370 - P.378

Point
・バルーン拡張・ステント留置のみでは治療が完結できない病変がある.
・アテレクトミーカテーテルの特徴により,それぞれ適応病変がある.
・重大な合併症を引き起こす可能性があるため,使用にあたっては知識と経験を必要とする.

生体吸収性スキャフォールド

著者: 邑井洸太 ,   大塚文之

ページ範囲:P.379 - P.388

Point
・生体吸収性スキャフォールド(BRS)は,一定期間のみ血管を支え,その後消失するデバイスである.
・Absorb® BVSは留置後3年以内のデバイス血栓症が多く,製造中止となった.
・超長期的なメリットへの期待は依然として存在し,血栓症リスクの少ない新たなBRSの開発が待たれる.

Ⅲ章 構造的心疾患(SHD)に対するインターベンション

経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)

著者: 山中太

ページ範囲:P.389 - P.396

Point
・外科的大動脈弁置換術(SAVR)の低リスク群に対しても,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の適応は拡大された.
・カテーテル人工弁の10年超の長期耐久性について,確立していく必要がある.
・TAVIかSAVRかは,患者の予後,解剖学的特徴,希望まで含めた,総合的な判断が必要である.

経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC)

著者: 神﨑秀明

ページ範囲:P.397 - P.402

Point
・僧帽弁交連部の一方に石灰化があると,PTMC後に対側でMRが増悪するリスクがある.
・PTMC後に有意なMRの増悪なく,僧帽弁口面積1.75 cm2以上が理想の目標である.
・近年,PTMCの適応は,高齢者における低侵襲治療としての役割も求められている.

経皮的僧帽弁クリップ術(MitraClip)

著者: 大野洋平

ページ範囲:P.403 - P.410

Point
・MitraClip®は,外科的edge-to-edge techniqueが元になっている経静脈-経心房中隔アプローチで行う僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテルデバイスである.
・逸脱弁尖による一次性MRに対しては,外科的僧帽弁形成術のリスクが高く,解剖学的にMitraClip治療に適した症例に適用される.
・心筋梗塞や拡張型心筋症などに伴う二次性MRに対しては,MRのみの介入の場合,外科手術リスクにかかわらず,解剖学的にMitraClip治療に適していれば適用されることが多い.

経皮的心房中隔欠損閉鎖術(ASD closure)

著者: 原英彦

ページ範囲:P.411 - P.415

Point
・多くの先天性心疾患症例が成人期に達し,成人先天性心疾患数は毎年増加を続けている.
・本邦の経皮的心房中隔欠損閉鎖術は1万例以上の実績をもつが,周術期死亡ゼロである.
・心房中隔欠損閉鎖栓はGORE社デバイスが承認され,合計3種類の閉鎖栓が使用可能である.

動脈管開存のカテーテル閉鎖術(PDA closure)

著者: 金澤英明

ページ範囲:P.416 - P.423

Point
・成人PDAは小児PDAとは異なる解剖学的特徴や病態的背景を有している.
・PDAのカテーテル治療は,低侵襲かつ安全で成功率の高い治療法である.
・個々のPDA形態に対応したデバイス選択,治療ストラテジーの検討が重要である.

卵円孔開存のカテーテル閉鎖術(PFO closure)

著者: 赤木禎治

ページ範囲:P.424 - P.430

Point
・潜因性脳塞栓の再発予防に対するPFO閉鎖術には,高いエビデンスがある.
・PFOの検出には,十分なValsalva負荷を用いた経胸壁バブルスタディーが重要である.
・経食道心エコーではハイリスクPFOの評価が重要であり,治療適応判断に重要である.

経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)

著者: 髙見澤格

ページ範囲:P.432 - P.439

Point
・薬物治療下でも心不全症状があり,左室内圧較差が50 mmHg以上残存する場合は,中隔縮小術(SRT)の適応となる.
・PTSMAは肥大した中隔心筋をエタノールにより凝固壊死させ,左室内圧較差を改善する.
・外科的中隔心筋切除術(SM)と同等の予後改善効果が期待できる.

慢性肺動脈血栓塞栓症に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)

著者: 杉村宏一郎

ページ範囲:P.440 - P.445

Point
・CTEPHの第一選択の治療は外科的治療である.
・日本のBPAの長期成績として5年生存率90%以上と報告されている.
・BPAの適応は広がりつつある.
・欧米のBPAの成績が報告され,世界的な議論が必要となっている.

左心耳閉鎖デバイス

著者: 永瀬聡 ,   草野研吾

ページ範囲:P.447 - P.452

Point
・超高齢社会の本邦において,心房細動による塞栓症予防手段の一つとして経カテーテル的左心耳閉鎖術への期待は大きい.
・左心耳閉鎖後に抗凝固薬を中止することが起因すると思われる,出血性脳卒中・心血管死亡・全死亡・慢性期大出血の減少が報告されている.
・安全性と有効性は徐々に改善しているが,術後抗血栓療法や適応患者選択などに関してさらなるエビデンス蓄積が必要である.

三尖弁カテーテル治療の最前線

著者: 天木誠

ページ範囲:P.454 - P.459

Point
・三尖弁閉鎖不全は肺動脈圧,左室駆出率や右室サイズとは独立した予後不良マーカーである.
・三尖弁閉鎖不全への単独手術介入はほとんどの適応患者に対して行われてこなかったが,より低侵襲であるカテーテル治療が欧州を中心に普及しつつある.
・三尖弁閉鎖不全へのカテーテル治療による修復により,症状や心不全再発率の抑制が得られる.

Ⅳ章 カテーテルアブレーションによる不整脈治療

心房細動カテーテルアブレーション

著者: 野田崇

ページ範囲:P.460 - P.467

Point
・心房細動カテーテルアブレーションでは,自覚症状を有する患者で適応となることが多いが,その判断は慎重に行うべきである.
・カテーテルアブレーションを含めたリズムコントロールの効力は,心房細動や心不全の病態が進む前に行われるべきであり,タイミングを見誤らないことが重要である.
・近年,心不全を合併した心房細動患者において,カテーテルアブレーションの有効性が多数報告され,生命予後や心不全入院を改善する治療法として積極的に考慮される.
・心房細動に対するアブレーションの方法は進歩しており,バルーンテクノロジーを含め,高周波カテーテルアブレーションを用いた高出力/短時間の通電やパルスフィールドなどの全く新しい方法によるカテーテルアブレーションも試みられつつある.

心室期外収縮/心室頻拍アブレーション

著者: 野上昭彦

ページ範囲:P.468 - P.477

Point
・頻発する心室期外収縮をアブレーションで抑制することで,心機能が改善する症例がある.
・心室頻拍アブレーション部位の同定法として,近年,機能的基質マッピングが注目されている.

Ⅴ章 脳・頸動脈インターベンション

急性期脳梗塞に対するインターベンション

著者: 山上宏

ページ範囲:P.478 - P.487

Point
・脳主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞に対し,血栓回収療法の有効性が確立した.
・臨床転帰改善を目標に,血栓回収療法と薬物の併用療法の臨床試験が進んでいる.
・血栓回収療法の適応拡大を目的としたランダム化比較試験が行われている.

Ⅵ章 腎動脈・四肢動脈インターベンション

腎動脈・四肢動脈インターベンション

著者: 河原田修身

ページ範囲:P.489 - P.498

Point
・腎動脈狭窄症の血行再建は,粥状硬化性に対してステント留置,線維筋性異形成症に対してバルーン形成術が第一選択である.
・腎デナベーションは,降圧療法としての有効性がいまだ検討中である.
・動脈硬化性末梢動脈疾患に対する血管内治療の成績は向上し,適応は拡大している.

Ⅶ章 大動脈疾患に対する血管内治療

大動脈疾患における血管内治療

著者: 鈴木佑輔 ,   熊谷紀一郎 ,   齋木佳克

ページ範囲:P.499 - P.505

Point
・大動脈疾患に対する血管内治療として,大動脈ステントグラフト内挿術による治療症例が増加している.

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目次

ページ範囲:P.344 - P.345

書評

ページ範囲:P.361 - P.361

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.507 - P.507

次号予告

ページ範囲:P.509 - P.509

奥付

ページ範囲:P.510 - P.510

基本情報

循環器ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2432-3292

印刷版ISSN 2432-3284

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