医療の進歩は目覚ましく,特に循環器領域では,数年前のスタンダードが現在では通じないことも少なくない.また,膨大な情報が行き交う昨今,自らが専門とする分野以外は,情報の適切な取捨選択を行うことは年々難しくなっている.そこで本特集は,ここ数年の間に重要な変化があった項目をピックアップし,第一人者が「何がどう変わったか」をわかりやすく解説することで,読者が多忙な日常業務の合間に自らの知識をアップデートすることを狙いとして企画された.
新たな知見による診療ガイドラインの改訂から,新しい薬・デバイス・術式の登場に至るまで多種多様な進歩があるが,本特集では「臨床医の診療内容に直結する変化」を基準として重要な情報に絞っている.また各項目の冒頭に「過去のスタンダード/現在のスタンダード」を記載し,「どう変化したか」が一目でわかるようになっている.
雑誌目次
循環器ジャーナル71巻1号
2023年01月発行
雑誌目次
特集 ここが変わった!循環器診療 最新スタンダード
序文
ここが変わった!循環器診療 最新スタンダード フリーアクセス
著者: 小室一成 , 清水渉 , 福田恵一
ページ範囲:P.4 - P.5
Ⅰ.疾患各論
急性心不全
著者: 網谷英介
ページ範囲:P.6 - P.10
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・急性心不全の院内死亡率は高く,予後は依然として厳しい状況にある.
・急性心不全を対象に血管拡張薬や強心薬など様々な臨床試験が行われてきたが,強固なエビデンスにつながる結果を得ることは難しかった.
●現在のスタンダード
・治療の時間軸に関する注目が高まっており,早期のうっ血解除を目的とした治療介入が求められる.
・急性心不全においても左室駆出率(EF)を参考に病態をとらえ,新規の心不全薬剤の有効性など,現在次々に検証されている段階であり,引き続きエビデンスに対する注意を続けることが重要である.
慢性心不全の薬物治療
著者: 奥村貴裕
ページ範囲:P.11 - P.19
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・慢性心不全は,左室駆出率40%未満のHFrEF,50%以上のHFpEF,40%以上50%未満のHFmrEFに分類され,推奨される治療指針が異なる.
・HFrEFでは,アンジオテンシン変換酵素阻害薬もしくはアンジオテンシンⅡ受容体遮断薬,β遮断薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を標準治療として導入する.
・HFpEFでは,確立した予後改善薬はなく,症状改善のための利尿薬と併存症に対する治療が推奨される.HFmrEFでは,個々の病態に応じて判断する.
●現在のスタンダード
・HFrEFの標準治療として,アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬,ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬が基本薬に位置づけられた.
・イバブラジンおよびベルイシグアトは,HFrEFの併用薬として,病態に応じて使用される.
・HFmrEFおよびHFpEFにおいて,SGLT2阻害薬の心イベント抑制効果が示された.
・HFrEF,HFpEFのカットオフと左室駆出率の意義が再考されるようになった.
不整脈カテーテルアブレーション
著者: 藤本雄飛 , 岩﨑雄樹
ページ範囲:P.21 - P.25
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・発作性上室性頻拍や心房粗動がアブレーション治療の中心だった.
・心房細動治療において,肺静脈隔離術が難しく,施設や術者が限られていた.
●現在のスタンダード
・3Dマッピングシステムにより,正確なカテーテル位置情報の把握が可能となっている.
・心房細動治療では,肺静脈隔離術の重要性が再認識され,症例の中心となっている.
・肺静脈隔離治療には高周波以外にバルーン治療の選択肢が出現し,広まっている.
不整脈デバイス治療
著者: 野田崇
ページ範囲:P.26 - P.32
ここが変わった!
●過去のスタンダード
【植込み型除細動器(ICD)】
・ICDは,致死性頻脈性不整脈への治療デバイスである.
・静脈を経由して留置したリードと皮下ポケットに植込むデバイス本体からなる.
【ペースメーカ】
・ペースメーカは,徐脈に対する確立された治療法であり,広く普及している.
・デバイス本体と電気刺激を心筋に伝えるリードからなっている.
・心室ペーシングのリードは安定が得られやすい右室心尖部に留置されることが多い.
●現在のスタンダード
【植込み型除細動器(ICD)】
・経静脈リードを用いない完全皮下型植込み型除細動器(S-ICD)も使用されている.
【ペースメーカ】
・心腔内に直接留置を行う経カテーテル的ペーシングシステム(リードレスペースメーカ)が使用されている.
・右室心尖部のペーシングでは,左室の同期性を失い収縮機能不全が生じることがある.
・心室同期性を保つための刺激伝導系(His束および左脚)領域からのペーシングが可能となっている.
急性冠動脈症候群
著者: 青木二郎
ページ範囲:P.33 - P.37
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・急性冠動脈症候群の診断にCK-MBを心筋バイオマーカーとして使用していた.
・急性冠動脈症候群のPCIでは鼠径アプローチを使用することが多かった.
・急性冠動脈症候群のPCI後におけるDAPT療法は1年以上継続していた.
●現在のスタンダード
・急性冠動脈症候群の診断や重症度判定には心筋トロポニンの測定が必須である.
・急性冠動脈症候群のPCIでは橈骨動脈アプローチが第一選択である.
・急性冠動脈症候群のPCI後におけるDAPT療法は,高出血リスクの場合は1〜3カ月間と短縮されてきている.
慢性冠症候群
著者: 伊苅裕二
ページ範囲:P.39 - P.44
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・虚血診断には,最初に運動負荷心電図を行い,リスクスコアを判定した.
・3枝病変にはCABGを勧めた.
・1枝病変にはPCIを勧めた.
●現在のスタンダード
・運動負荷心電図は虚血診断には使用されなくなった.しかし,運動耐容能などの評価法として現在でも広く使用されている.
・ISCHEMIA試験の結果,内科治療とPCI/CABGの4年死亡率に差はないため,患者さんとshared decision makingを行い,治療法を決定する.
・CCSに対するPCI/CABGの優れている点は,早く症状を改善すること,自発的に発生する心筋梗塞を予防すること,緊急血行再建を予防できることである.
弁膜症の経カテーテル治療
著者: 林田健太郎
ページ範囲:P.45 - P.49
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・大動脈弁狭窄症に対する標準治療は開胸による外科手術のみであった.
・僧帽弁閉鎖不全症に対する標準治療は,器質性については外科手術,機能性については薬物治療がメインであった.
●現在のスタンダード
・大動脈弁狭窄症の標準治療として,外科手術に加えTAVIも加わり,80歳以上については第一選択として考えるべき治療として確立された.
・僧帽弁閉鎖不全症(MR)のカテーテル治療としてMitraClipも加わり,特に機能性MRに対しては心不全再入院や予後を改善することがわかった.
・これらをもとに,2020年に本邦や米国のガイドラインが大きく改訂されている.
心筋症
著者: 久保亨
ページ範囲:P.50 - P.54
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・心筋症の原因は不明なことが多い.
・心筋症は心臓形態や機能によって診断され,原因遺伝子を参考にすることはほとんどない.
・特発性心筋症の治療は対症療法にとどまる.
●現在のスタンダード
・心筋症の定義と分類が明確となり,特に二次性心筋症鑑別の重要性が認識されている.
・心筋症の遺伝学的検査の利用が徐々に広まってきており,診断や予後予測に利用され得る.
・特発性心筋症の病態を修飾する効果のある薬剤が出現し,今後の利用が期待される.
肺高血圧症
著者: 平出貴裕 , 片岡雅晴
ページ範囲:P.55 - P.60
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・肺高血圧症の定義は「安静時の平均肺動脈圧が25 mmHg以上」である.
・肺高血圧症は稀少疾患であり,日常診療で診断する機会は稀である.
・肺高血圧症に対する治療は,肺血管拡張薬による対症療法のみである.
●現在のスタンダード
・2022年に発表された欧州のガイドラインでは,肺高血圧症の診断基準が「安静時の平均肺動脈圧が20 mmHgを超える」に変更され,運動誘発性の診断基準も追加された(本邦のガイドラインは2022年現在まだ変更されていない).
・左心系疾患や呼吸器疾患などを合併した高齢者の肺高血圧症が多く診断されている.
・疾患の進行を抑制する薬剤の有効性が第三相試験で示された.
・遺伝学的背景に応じた治療法の選択が求められている.
先天性心疾患
著者: 弓田悠介 , 椎名由美
ページ範囲:P.62 - P.68
ここが変わった!
●過去のスタンダード(2017年ガイドライン発表時)
・先天性心疾患(CHD)は生産児の約100人に1人の割合で発生し,そのうち約90%が生存して成人するため,2020年には成人先天性心疾患(ACHD)患者数は小児患者数をはるかに凌駕すると予想される.
・米国では2015年に専門医制度が発足し,専門施設による診療体制が整備されている.本邦でも専門医の育成,専門施設を中心とする多職種によるチーム医療の診療体制の整備が必要である.
・Fallot四徴症術後の肺動脈弁閉鎖不全に対する経カテーテル肺動脈弁留置術は欧米を中心に多くの国で実施されており,今後国内での導入が待たれる.
●現在のスタンダード
・CHDの予後は手術および内科的治療法の発展により改善傾向にあり,特に乳幼児期の死亡率が改善された結果,ACHD患者数の割合は既にCHD患者全体の2/3を超えている.これによりACHD患者における複雑CHD患者数は増加しているが,依然として中等度から複雑CHD患者の平均余命は一般人口のそれより20年程度少なく,生涯にわたるケアが重要である.
・本邦においても2022年より専門医制度が正式に開始されるとともに,2021年に総合修練施設,連携修練施設の認定が開始され,これらの専門病院を中心とした診療体制の整備が始まっている.
・2021年に本邦でも経カテーテル肺動脈弁留置デバイスが承認され,2022年に国内第一例が報告されたところであり,今後の急速な発展が期待される.
遺伝性不整脈
著者: 大野聖子
ページ範囲:P.69 - P.75
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・遺伝性不整脈は非常に稀な疾患で,日常診療で診断する機会は少ない.
・無症状の患者に対する予防的治療は不要である.
・遺伝学的検査は治療法選択や予後予測に有用ではない.
●現在のスタンダード
・健康診断などで心電図異常を指摘され,診断される症例も多い.
・無症状患者であってもリスク層別化は可能であり,予防的介入が実施される.
・一部の遺伝性不整脈によっては,遺伝型によって治療法が異なり,予後予測も可能となっている.
静脈血栓塞栓症の抗凝固療法
著者: 山本剛 , 福士圭
ページ範囲:P.76 - P.81
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・未分画ヘパリンを調節投与して,ワルファリンの効果が安定するまで継続する.
・ワルファリンは,PT-INRが1.5〜2.5となるように調節投与する.
●現在のスタンダード
・安定例では,初期治療期,維持治療期に非経口抗凝固薬あるいはDOACを投与する.
・全身状態,下肢症状,家庭環境,病院環境が適しているならば外来治療を推奨する.
心アミロイドーシス
著者: 遠藤仁
ページ範囲:P.82 - P.86
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・診断には病理組織でアミロイド沈着を確認する必要があるため,生検は必須である.
・心アミロイドーシスは極めて稀な疾患で,日常臨床で診断する機会はほとんどない.
・原疾患に対する治療薬は一切なく,診断はできても予後を改善することは難しい.
●現在のスタンダード
・骨シンチグラフィが診断に有用であり,病理所見を含まない診断基準も存在する.
・心アミロイドーシスは高齢の拡張障害患者に多くみられ,他の肥大性心疾患にも潜在する.
・疾患の進行を抑制する薬剤が開発され,第Ⅲ相試験でも予後の改善が示された.
Fabry(ファブリー)病
著者: 山川裕之
ページ範囲:P.88 - P.97
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・Fabry病は小児科の希少疾患と考えられていた.
・Fabry病の診断としては,αGAL酵素活性や症状だけで診断していた.
・治療は,酵素補充療法が主体であった.
●現在のスタンダード
・Fabry病は,女性や男性成人で発症し,心肥大に1%程度存在する.
・Fabry病の診断としては,症状だけでなく,男女ともに遺伝子診断が必要である.
・治療は酵素補充療法・薬理学的シャペロン療法だが,遺伝子治療も臨床試験が行われている.
大動脈疾患—Stanford B型解離に対する治療方針
著者: 吉武明弘
ページ範囲:P.98 - P.101
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・大動脈解離は発症から2週間以内を急性期,2週間以降を慢性期と定義されていた.
・急性期の合併症を有する急性Stanford B型大動脈解離に対してのステントグラフト治療は推奨されていたが,合併症を有さないStanford B型急性大動脈解離は保存的な治療が行われていた.
●現在のスタンダード
・2週間までを急性期,2週間から3カ月を亜急性期,3カ月以降を慢性期と定義された.
・ステントグラフト治療の広がりとともに,合併症を有さない急性Stanford B型大動脈解離であっても将来の瘤拡大を予防する(preemptive)目的で,亜急性期から慢性早期でのpreemptive TEVAR(胸部ステントグラフト内挿術)が推奨されている.
末梢動脈疾患
著者: 田中悌史
ページ範囲:P.102 - P.108
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・冠動脈以外の末梢動脈の閉塞性動脈疾患を末梢動脈疾患(PAD)と総称する.
・重症下肢虚血(CLI)とは慢性動脈閉塞による下肢の重症虚血であり,安静時疼痛または潰瘍・壊死を伴い,血行再建なしでは下肢の組織の維持や疼痛の解除が行えない病態を指す.
・病変部位ごとに,TASC分類に応じて治療方針を決定する.症候性ASO患者における浅大腿動脈のTASC A〜C型病変は血管内治療(EVT)を第一選択とする.
●現在のスタンダード
・PADのうち,下肢閉塞性動脈疾患をLEAD,上肢閉塞性動脈疾患をUEADと呼ぶ.
・包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)とは,下肢虚血,組織欠損,神経障害,感染などの肢切断リスクをもち,治療介入が必要な下肢を総称する概念である.
・病変部位ごとにそれぞれEVTおよび外科的血行再建を検討する.大腿膝窩動脈領域においては,25 cm未満の病変はEVTを行う.
Ⅱ.循環器診療に関わる領域
救急・集中治療
著者: 笠岡俊志
ページ範囲:P.109 - P.112
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・重症心血管疾患の治療は薬物療法と手術である.
・Swan-Ganzカテーテルによる血行動態の評価やモニターを行う.
・CCUは急性心筋梗塞患者のモニターと治療を担う.
●現在のスタンダード
・最新のデバイスを用いた治療が重症心血管疾患の予後を改善している.
・多職種連携のハートチームによる対応が求められている.
・CICUは様々な重症心血管疾患の集中治療を担う.
心臓リハビリテーション
著者: 安達仁
ページ範囲:P.114 - P.121
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・心臓リハビリテーションは早期退院を目指すための「入院中だけのリハビリテーション」で始まった.
・その後,運動・食事療法・生活習慣の改善を外来で行うcenter-basedの「包括的治療手技」・「疾病管理プログラム」となった.
・虚血性心疾患ではカテーテル治療後の発症予防プログラムであった.
●現在のスタンダード
・自宅や自宅周辺で行うhome-basedのプログラムを模索中である.
・労作性狭心症において,カテーテル治療以前に実施するべき治療法に位置付けられた.
腫瘍循環器学の新しい診療ガイドラインと今後の課題
著者: 佐瀬一洋 , 木田圭亮 , 志賀太郎
ページ範囲:P.122 - P.127
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・がん治療関連心機能障害(CTRCD)として抗がん剤や放射線の心毒性に対応していた.
・心エコーは添付文書記載時のみ,アントラサイクリン前でなくトラスツズマブ前に実施していた.
・がん薬物治療中の無症候性心機能低下は,心毒性として治療を中止していた.
●現在のスタンダード
・がん治療関連心血管毒性(CTR-CVT)として新薬や多彩な循環器疾患にも対応する.
・ベースライン・リスク評価に基づき,CTR-CVTの予防と早期診断の管理を個別化する.
・CTR-CVTを発症した場合でも,可能な限り循環器支援によるがん治療完遂を目指す.
糖尿病
著者: 西田友哉 , 綿田裕孝
ページ範囲:P.129 - P.134
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・細小血管合併症予防のためHbA1c 7.0%未満を目標とする.
・BMI 22から算出した理想体重に基づき摂取カロリー量を設定する.
・第一選択薬は明示せず病態に応じた薬剤選択を行う.
●現在のスタンダード
・高齢者は,患者の特徴や健康状態に基づき個別に血糖管理目標を設定する.
・食事療法は,個別に設定した目標体重に基づき柔軟な対応を行う.
・薬物療法は,合併疾患に基づいた薬剤の優先順位を考慮する.
腎疾患
著者: 菅野義彦
ページ範囲:P.135 - P.139
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・腎臓病といえば低たんぱく食.
・RAS阻害薬で腎保護を図る.
・腎移植は日本では難しい.
●現在のスタンダード
・患者の状況を考えて適切な食事指導を行う.
・RAS阻害薬にSGLT2阻害薬などが加わる可能性がある.
・血液型不適合の先行的腎移植が増加している.
スポーツと循環器学
著者: 真鍋知宏
ページ範囲:P.140 - P.144
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・スポーツ心臓と病的左室肥大の鑑別は,経験に基づいて行われていた.
・スポーツ参加・禁止の基準は,20年以上前から存在していた.
・新型コロナウイルス感染症罹患を想定したスポーツ復帰の指針が存在しなかった.
●現在のスタンダード
・スポーツ心臓と病的左室肥大の鑑別は,問診,各種検査所見を参考に行われる.
・スポーツ参加・禁止の基準は,欧米の見解を踏まえてアップデートされている.
・新型コロナウイルス感染症罹患後のスポーツ復帰指針が存在する.
Ⅲ.循環器診療の未来
心筋再生治療の開発
著者: 澤芳樹
ページ範囲:P.146 - P.153
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・心筋梗塞などで一度障害された心筋は回復しない.
・重症心不全の最終的治療は,心臓移植や補助人工心臓などの置換型医療である.
・ヒト(他家由来)細胞,あるいは患者自身の組織・細胞を原料とするものの製品化は難しい.
●現在のスタンダード
・障害された心筋は,再生医療で回復できる可能性がある.
・ヒト(他家由来)幹細胞,あるいは患者自身の組織・細胞から治療用製品が実現できる.
AI診断
著者: 小寺聡
ページ範囲:P.154 - P.158
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・AI診断は研究段階であり,日常臨床で活用できるAI診断はない.
・ルールベースのAIでは,一つ一つのルールを人間が決める必要があった.
●現在のスタンダード
・AI診断に対する診療報酬の加算も始まり,日常臨床でAI診断を活用できるようになった.
・ディープラーニングのAIでは,ルールを自動生成できる.
遠隔診療
著者: 渡邉英一
ページ範囲:P.159 - P.164
ここが変わった!
●過去のスタンダード
・遠隔診療は対面診療を補完するものであり,主に離島,へき地で実施されていた.
・IoTを用いた診療と対面診療の組み合わせが推奨されるも診療報酬には反映していなかった.
・植込み型心臓電気デバイスチェックは対面診療で行われていた.
●現在のスタンダード
・COVID-19パンデミックに伴って,遠隔診療推進の機運が高まっている.
・IoT機器を用いた在宅心臓リハビリテーションが進められている.
・植込み型心臓電気デバイス(CIEDs)の遠隔モニタリングが進化している.
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