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特集 今だからこそ聞きたい心不全診療のこと。 序文
今だからこそ聞きたい心不全診療のこと。 フリーアクセス
著者: 猪又孝元1
所属機関: 1新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科学
ページ範囲:P.172 - P.173
最近,予後という概念にどう対峙するべきかを考える機会が多い.循環器診療は,即時性と機動性が重視され,その場をいかに凌ぐかが重視されてきた.救命がその最たる治療標的である.一方で,心不全のadvance care planning(ACP)の重要性が認識され,保険診療にも組み込まれた.人生の店じまいをいかに図り,生きざまに沿った道筋をいかにつけてあげるかという作業である.超高齢社会のもと,その必要性は増すばかりである.しかし,目の前の患者に対し,自信をもって先手先手にACPを展開できない自分がいる.理由はひとつ,がんとは異なり,個別の心不全予後を推測することが大変難しいからである.ACPの質を高めるためには,結局のところ心不全の病態論の質を高めるしかない.ところで,この10年で心不全の形態が大きく変化した.38歳の拡張型心筋症のようないわゆる「きれいな」心不全に加え,フレイルと認知障害が重なり入院を繰り返す92歳のHFpEF症例——心不全があるのは確かだがdisability全体のなかで心不全が占める割合は2割にも満たないのではないか,というような患者像が急増している.「心臓の不全」と「非心臓の不全」を一緒くたに扱うと,予後予測はもちろん,研究も,地域連携も,はたまた,実地臨床にも大きなブレが生じ,本質から離れた議論へつながりかねない.結局のところ,ひとつひとつを適切に切り分け,丁寧に要因分析を繰り返すしかないように思える.
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