在宅医療は,通院が困難になった患者に対して,自宅や施設に医療者が直接訪問して行う医療のことである.また,在宅医療は,可能な限り住み慣れた地域で自分らしく療養することができるように,退院支援・日常の療養支援・急変時対応・在宅看取りなど多職種チームによる包括的ケアを目標としている.
最近では,様々なところで在宅医療について取り上げられる機会が増えてきた.実際に,在宅医療を受けている患者数は年々増加傾向となっていて,今後のさらなる高齢化率上昇に伴い,その認知度や必要性はさらに高まってくると予想される.
雑誌目次
循環器ジャーナル72巻1号
2024年01月発行
雑誌目次
特集 在宅時代の心不全チーム医療—多職種連携,ACPから漢方まで
序文
在宅時代の心不全チーム医療—多職種連携,ACPから漢方まで フリーアクセス
著者: 岡田健一郎
ページ範囲:P.8 - P.9
Ⅰ.各地域における心不全再入院予防の取り組み
大阪における心不全再入院予防の取り組み
著者: 西尾まゆ
ページ範囲:P.10 - P.17
POINT
●超高齢社会で増加している心不全患者のための,退院支援の実際について記載する.
●大阪府下は急性期病院が多く医療体制は充実しているが,療養型病床の絶対数が少ないこともあり,概ね自宅への退院となっている.
●自宅環境は,独居や,高齢夫婦のみ,日中独居状態であることが多く,入院早期からの対策が必要である.
信州(長野)における心不全再入院予防の取り組み
著者: 渡辺徳 , 上條奈々恵
ページ範囲:P.18 - P.27
POINT
●慢性心不全診療(心不全ケア)には,医療と介護・福祉の連携が必須である.
●地域と二次医療圏の特性に合わせて医療提供体制と地域連携を構築する.
●既存の人材・組織を有機的に結びつけて活用し,新たな診療体制と連携を生み出す.
広島における心不全再入院予防の取り組み
著者: 北川知郎 , 中野由紀子
ページ範囲:P.29 - P.37
POINT
●広島県では,自治体と協同した心不全の地域完結型診療を目指す取り組みを進めている.
●同事業では,急性期,回復期,維持期のシームレス心リハネットワークを構築している.
●維持期における包括的心臓リハビリテーションの実践が重要な課題となっている.
Ⅱ.心不全の在宅医療
心不全の在宅医療—その役割と入院医療との違い
著者: 渡邉雅貴
ページ範囲:P.39 - P.43
POINT
●在宅心不全療養を病院での管理の延長として行ってはならない.
●慢性心不全急性増悪は想定されたリスクであり,対応策を複数準備しておくべきである.
●心不全の在宅療養においては,様々な意思決定,意思決定支援を,医師ー患者・患者家族のみで行うべきでなく,多職種にて共有されるべきである.
クリニック外来での心不全診療の実際—病院との連携をどうするか?
著者: 横山広行
ページ範囲:P.44 - P.52
POINT
●かかりつけ実地医家による早期心不全診断には,BNPまたはNT-proBNPの測定が有効である.
●循環器専門医は標準治療を導入し,外来診療はかかりつけ医との連携が重要である.
●急性心不全救急搬送基準の作成は,地域循環器専門施設との事前協議が必要である.
終末期心不全患者の緩和ケア—病院から在宅(地域)へどうつないでいくか?
著者: 大石醒悟
ページ範囲:P.53 - P.62
POINT
●緩和ケアの目的は質の高い生存“quality survival”の実現にある.
●認知機能低下患者においても本人の意向の実現が重視される.
●地域連携の中で,ACPをつなぎ,症状緩和の方法論を共有することが求められる.
高齢心不全患者のACPと看取り
著者: 岡村知直
ページ範囲:P.63 - P.72
POINT
●アドバンス・ディレクティブではなくアドバンス・ケア・プランニングを行う.
●Ask-Tell-Askアプローチを用いて患者の気持ちを引き出し,意思決定支援を行う.
●在宅で亡くなることが正しいわけではなく,状況に合わせた対話を行っていく.
Ⅲ.心不全在宅管理におけるチーム医療
地域における多職種連携のコツ
著者: 笹岡大史
ページ範囲:P.73 - P.79
POINT
●多疾患が併存する高齢者も多く,心不全のみの病態管理だけではなく,併存疾患の管理も大切である.
●健康を保ち病的な状態に陥らないように,生活環境(食事,運動,栄養,衛生など)を整える必要がある.
●重症化する前に早期診断・早期治療を行い,繰り返す入退院を防ぐことが重要である.
●ITシステムを活用し情報共有を行い,多職種が連携し病態管理に取り組む必要がある.
心不全の病診連携で何が大切か?—医療ソーシャルワーカー(MSW)の立場から
著者: 齋藤慶子
ページ範囲:P.80 - P.87
POINT
●病診連携で大事なことは,患者のLIFE(人生・生活・生命)を診ることである.
●病院と地域では,フィールド,疾病の理解,言葉が違う.
●病院と地域の多施設・多職種で行う共同意思決定が重要である.
心不全地域連携におけるハートノートの活用
著者: 竹谷哲
ページ範囲:P.89 - P.96
POINT
●心不全は管理が難しく,再入院率が高いとされている.
●加えて,循環器領域では大都市圏での広域・複数の中核病院が賛同する地域医療連携は運用されにくい.
●大阪では2017年より「大阪心不全地域医療連携の会」が活動しており,循環器領域での地域医療連携の新しい取り組みとなる.
●本稿では本会の取り組みを通じて心不全地域ネットワークの必要性について論じたい.
在宅心不全患者のリハビリテーション
著者: 井谷祐介 , 鬼村優一 , 岡田健一郎
ページ範囲:P.97 - P.103
POINT
●訪問リハビリは通院困難な高齢心不全患者の受け皿になり得る.
●訪問リハビリでは個々の身体・生活状況,家屋環境に応じた直接的な介入ができる.
●生活の場に直接伺う訪問リハビリにより,心不全の再入院予防が期待できる.
在宅心不全患者の薬学的管理—訪問薬剤師の取り組み
著者: 狭間研至
ページ範囲:P.104 - P.111
POINT
●薬剤師の専門性は,薬をお渡しするまでではなく,渡した後をフォローしていくところにある.
●医師は薬剤師によるアセスメントを踏まえて診察することで,効率性と安全性が確保できる.
●在宅心不全患者治療でも,薬剤師の訪問診療同行に加え単独訪問を行うことが重要である.
在宅心不全患者の栄養管理
著者: 宮澤靖
ページ範囲:P.112 - P.120
Point
●心不全の栄養管理は「減塩・水分制限」「減量」が重要とされてきたが,高齢化が進む現在では,単にこれらだけでの栄養管理内容では不十分であり,治療方針など多角的な評価のもと,個々に応じた栄養指導が必要である.
●1日に3 gの減塩により心血管事故の発症を10〜15%減少させ,1 gでも医療コストの削減に効果がある.
●高齢化が進み,単なる減塩,水分制限,減量だけではなく,個々の症例の病態や治療について理解することが必要である.
在宅心不全患者に役立つ漢方薬の使い方
著者: 土倉潤一郎
ページ範囲:P.121 - P.130
POINT
●西洋と漢方のお互いの長所を活かした診療が望ましい.
●心不全患者における漢方の出番は,心不全治療よりも体調管理.
●漢方薬を処方する際は必ず甘草の量をチェックする.
Ⅳ.心不全在宅医療の可能性と展望
心不全療養指導士の在宅医療における役割と可能性
著者: 眞茅みゆき
ページ範囲:P.131 - P.136
POINT
●心不全在宅医療では,患者の複合的な問題に対応するためのチーム医療が求められている.
●心不全療養指導士は,心不全在宅医療における多職種チーム医療を実現する人材である.
心不全終末期におけるICD/CRTD植込み患者のdeactivation(除細動機能の停止)
著者: 鈴木豪
ページ範囲:P.137 - P.141
POINT
●高齢化により増加する慢性心不全例において,ICD使用例では終末期緩和ケアの際に除細動機能を継続するか検討する場合がある.
●多職種による医学的・倫理的な検討が重要である.
●診療のなかで繰り返しアドバンス・ケア・プランニング,アドバンスディレクティブを確立していくことが重要である.
地域における植込型補助人工心臓装着患者の管理—現状と課題
著者: 肥後太基
ページ範囲:P.142 - P.149
POINT
●植込型補助人工心臓治療を受ける患者数は増加しつつあるが,長期の管理にあたっては一部の医療機関でのみ行われているのが現状である.
●植込型補助人工心臓治療の地域連携やシェアードケア,さらには在宅も含めた医療介護体制の構築は遅れている.
●今後地域での植込型補助人工心臓治療の普及が求められる.
成人先天性心疾患患者の移行期医療—病診連携,在宅管理における課題
著者: 塚本泰正
ページ範囲:P.150 - P.157
Point
●外科手術成績の向上により,多くの先天性心疾患症例が成人期に到達することが可能となり,成人先天性心疾患患者は増加傾向にある.
●成人先天性心疾患症例に生じる諸問題に対し,専門医療機関において成人先天性心疾患専門医を中心とする診療体制が構築されてきている.
●現状では成人先天性心疾患領域における病診連携や在宅医療は十分に整備されているとは言えず,今後の体制整備が望まれる.
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