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ショック―緊急検査と処置
shock:emergency examination and treatment
石倉宏恭
(福岡大学主任教授・救命救急医学)

治療のポイント

・血圧が低下する前にショックを認知する.

・ショックを認知したら,循環動態を維持しながら,原因検索と根本治療を並行して行う.

◆病態と診断

A病態

・ショックとは「生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果,重要臓器の血流が維持できなくなり,細胞の代謝障害や臓器障害が起こり,生命の危機に至る急性症候群」と定義される.

・生体がショックに陥ると,これに対する代償機転が働き,交感神経の亢進と内因性のカテコールアミンが分泌される.その結果,心収縮力の増強と頻脈,末梢血管が収縮し,重要臓器の血流を維持しようとする.このため,血圧の低下はこの代償機転の破綻を意味する.

B診断

収縮期血圧90mmHg以下をショックの1つの指標とすることが多いが,必ずしも当てはまるわけではなく,重要臓器の血流低下によって生じる徴候を的確に認識する必要がある.

・具体的には,蒼白(pallor),虚脱(prostration),冷汗(perspiration),脈拍触知不能(pulseless),呼吸不全(pulmonary insufficiency)の5徴は,ショックを疑う所見である.また,代謝性アシドーシスの呼吸性代償の結果として認められる頻呼吸尿量低下意識の変容もショックの診断に重要な所見である.加えて,ショック診断後の原因の鑑別()はその後の治療方針決定において重要である.ただし,ショックの原因は画一的でなく複数の原因が混合している場合があることを忘れてはならない.

◆治療方針

 ショックを認知した場合,人員を確保し,以下の処置と原因の検索に努める.基本はABCの安定化である.

A気道管理(Air way)

 気道閉塞や意識障害を認める場合は,気道確保や気管挿管を実施する.

B呼吸管理(Breathing)

 酸素を投与して全身の酸素化を維持することは重要である.自発呼吸が弱いか,認めない場合

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