GL急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)
GL肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)
GL内科救急診療指針2022
GLアナフィラキシーガイドライン(2014年)
GLJRC蘇生ガイドライン2020
治療のポイント
・突然の呼吸困難をきたす疾患には緊急性の高い致死的病態が含まれる.その代表は上気道閉塞(異物・浮腫・出血),緊張性気胸,肺血栓塞栓症(PTE),ACS,神経筋障害(ギラン・バレー症候群,急性中毒)で,これらを疑った時点で専門医に連絡し,その間にも評価を進める.
・初期ABCD評価,二次ABCD評価,酸素・静脈路・モニター,バイタルサイン,簡潔な病歴聴取の一連を迅速に行う(系統的アプローチ).
・一次救命処置,二次救命処置の準備を整えておく.
◆病態と診断
A病態
・呼吸困難とは,本来意識しないで行っている呼吸を意識し始めるときに感じる症状で,「何時何分に出現した」と答えられるのが突然の呼吸困難である.
・気道・血管・胸膜が「詰まる」・「破れる」機序で起こり,呼吸中枢と肺・呼吸筋のループのバランスが突然崩れて生じる.
・交感神経の緊張により一過性に血圧上昇をきたすことがある.血圧が正常でも顔面蒼白,皮膚の湿潤・冷感などの所見はショックを示唆する(→,「ショック―緊急検査と処置」の項参照).
B診断
・緊急性の高い致死的病態を優先的に鑑別する.
・嗄声・上気道狭窄音(stridor)を認めればアナフィラキシー,気道異物,急性喉頭蓋炎を疑う.
・胸痛を伴えばkiller chest painである緊張性気胸,肺血栓塞栓症(PTE:pulmonary thromboembolism),ACSを疑い,病歴聴取・身体診察とともに来院10分以内に12誘導心電図検査を行う.頸静脈の怒張・明らかな呼吸音の左右差,既往歴,受傷機転,先行する処置などから緊張