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治療指針

熱中症
heat illness
井上貴昭
(筑波大学教授・救急・集中治療医学)

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GL熱中症診療ガイドライン2015

GL新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き(第2版)(2022)

ニュートピックス

・COVID-19感染拡大時の熱中症対応について,「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」において,留意点が示された.以下はCOVID-19流行下での留意点である.

1)COVID-19感染拡大下でも,「新しい生活様式における熱中症予防行動」として,屋外で2m以上離れているときは適宜マスクを外すことが推奨される.

2)マスク着用を要する状況下では1時間以上の激しい運動の回避と水分の頻回な補給が推奨される.

3)熱中症予防策としてエアコン使用が推奨される一方,設定温度の適切な調整とエアコン使用中の頻回な換気も重要である.

4)熱中症とCOVID-19の鑑別は,臨床症状のみでは困難であり,感染が否定できない場合,初療においては,マスク,アイシールド,ガウンなどの適切な個人防護服を用いる.

・東京オリンピック・パラリンピック会場では,主として労作性熱中症に対する緊急冷却としてice bathによるcold water immersion法が採用され,現場で深部体温を下げたあとの医療機関搬送システムが整備された.

治療のポイント

・熱中症の予後は高体温の持続時間に依存するため,中心部体温が38℃台になるまでできるだけ早く冷却するとともに,十分な水分・電解質の補充を行うことに尽きる.

・重症例では中枢神経障害,DIC,肝障害,腎障害,心筋傷害,急性呼吸促迫症候群,横紋筋融解症などの臓器障害を合併することがあるが,治療は対症療法が主体である.

・臓器障害に対する支持療法として,血液浄化療法,人工呼吸管理などは躊躇なく導入を検討する.

◆病態と診断

A病態

・熱中症とは「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」と定義される.

・本来で

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