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GL消化性潰瘍診療ガイドライン2020改訂第3版
GL大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン(2017)
治療のポイント
・ショック状態の場合はすみやかに循環動態の安定をはかる.
・出血の原因となる疾患,出血部位を同定することが重要である.
・原因となる疾患に応じた止血を行う.
・止血が得られたのちに原因となる疾患に対する治療を考慮する.
◆病態と診断
A病態
・消化管内に出血した血液そのものを嘔吐することを吐血といい,食残などに血液が混じたものを嘔吐するのは吐血とはよばない.
・一方,下血は血液が肛門から排出されるものを指すが,上部消化管からの出血の場合はヘモグロビンが胃酸や腸内細菌によって酸化され,黒色に変換されることでタール便として排出される.肛門に近い下部消化管からの出血の場合は鮮血便として排出される.
・吐血をきたす病態としては①胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍,②胃癌,③食道静脈瘤破裂,④急性胃粘膜病変(AGML:acute gastric mucosal lesion),⑤マロリー・ワイス症候群などが挙げられる.
・下血をきたす病態としては,上記の上部消化管出血に加えて,①大腸癌,②大腸憩室出血,③痔核などの下部消化管出血が挙げられる.
・まれなものとして,メッケル憩室の異所性胃粘膜による潰瘍出血や,腹部大動脈瘤の消化管への穿破など消化管の疾患ではない場合もあるので注意が必要である.
B診断
・吐血・下血の原因となる疾患を特定し,全身状態の程度を把握する.
・血液学的検査・血液生化学検査を行い貧血の程度を把握する.
・緊急内視鏡検査を行い原因疾患,出血部位を同定し止血を検討する.緊急内視鏡検査ができない場合は,施行できる施設へ搬送する.
・内視鏡での観察が困難な部位の場合,造影CT検査を行い出血部位を推定する.
・緊急血管造影検査を行って出血部位の同定と画像下治療(IVR:i