ニュートピックス
・外傷患者が大量出血により循環破綻状態に陥っている場合には,細胞外液の投与を制限し,大量輸血プロトコール(MTP)を開始するとともに,すみやかに蘇生的緊急止血術と確実な気道確保を実施する.
治療のポイント
・ショックの有無は収縮期血圧と脈拍数のみでなく,四肢の冷感,湿潤などの身体所見や代謝性アシドーシス,血清乳酸値,時間尿量なども用いて評価する.
・ショックの原因病態の鑑別には超音波検査装置を用いる.
・外傷の大量出血では,臓器損傷とショックそのものが血液凝固障害を引き起こすため,赤血球液製剤に加え新鮮凍結血漿と濃厚血小板製剤を投与して血液凝固能の改善をはかる.
◆病態と診断
A病態
・循環血液量減少性ショックは,循環血液量が減少することにより,左室拡張末期容量が低下して1回心拍出量が減少することで全身組織への血液灌流が低下する病態である.
・1回心拍出量の減少を代償するために頻脈になるとともに,皮膚や四肢,腸管,腎などから,脳や心筋への血流の再分布,好気性代謝から嫌気性代謝への移行が生じ,四肢の冷感・湿潤などの身体所見や時間尿量の減少,代謝性アシドーシス,血清乳酸値の上昇が認められる.
・循環血液量の減少には,出血により全血成分が減少する場合と,主に血漿成分のみが減少する場合がある.後者の原因として,大量発汗や頻回の下痢・嘔吐,広範囲熱傷や重症急性膵炎などでの血管透過性亢進がある.
B診断
・収縮期血圧が維持されていても組織灌流の低下がすでに生じていることがあるため,四肢の冷感・湿潤などの身体所見や,代謝性アシドーシス,血清乳酸値,時間尿量などからショックの有無を評価する.
・四肢の冷感・湿潤,頻脈を伴うショックでは,心原性ショック,心外閉塞・拘束性ショック,循環血液量減少性ショックが原因であるため,超音波診断装置を用いていずれの病態であるかを鑑別する.
・超音波検査では,下大静脈