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上気道閉塞
upper airway obstruction
織田 順
(大阪大学大学院教授・救急医学)

治療のポイント

・鼻腔(口腔)・咽頭・喉頭~声門下気管までのどこかが塞がれ「息ができなくなる」状態で,すべての臨床医が遭遇する機会がある.

・緊急度がきわめて高く,早期に適切な処置(気道確保)が行われないと死亡あるいは重篤な低酸素脳症に直結する.

・気道確保が最優先され,原因の特定はあくまでその後である.

・気道確保のための器具や応援態勢を整えておく.

◆病態と診断

・異物(食事や嘔吐物の誤嚥,喀痰や垂れ込んだ唾液の喀出不良)だけでなく,舌根沈下,炎症やアレルギー機序による腫脹・浮腫(急性喉頭蓋炎,アナフィラキシー,遺伝性血管性浮腫,抜管後喉頭浮腫,気道熱傷や顔面・頸部熱傷),周囲組織からの圧迫(腫瘍,後咽頭間隙血腫),上気道構造の直接破壊(外傷)などさまざまな原因で起こる点に注意する.

・チョークサイン(無意識に親指と人差し指で自身ののどをつかむ)は気道の完全閉塞の徴候で,呼吸の動きは消失し発声も不可となり,急速にチアノーゼが出現する.数分内に意識障害から心停止に至る.ただし典型的なチョークサインを呈さないことも多い.

嗄声や犬吠様咳嗽,吸気時の気道狭窄音(stridor)は閉塞が切迫している状態を疑わせる.呼吸補助筋使用による胸骨上窩や鎖骨上窩の陥凹が出現し(努力様呼吸),酸素消費量増加の悪循環を生じるとともに,短時間で完全閉塞へと進行する危険がある.

・急激な出現は異物や外傷,先行上気道感染や発熱,咽頭痛があれば急性喉頭蓋炎やクループ症候群,全身潮紅や膨疹を伴えばアナフィラキシーによる喉頭浮腫が疑われる.

・診断にこだわり,画像検査目的で仰臥位を強いたり喉頭鏡検査で気道を刺激したりすることは,しばしば病態を増悪させることに留意する.

・また,SpO2 値は気道の閉塞の度合いを反映しているわけではないので,SpO2 低下がないからといって閉塞が軽度だと考えるのは危険である.

◆治療方針

 気道

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