治療のポイント
・慢性呼吸不全の増悪を引き起こす原因疾患はさまざまで,その基礎疾患や安定期の状態,治療内容をできる限り把握する.
・増悪時の呼吸機能低下に伴う低酸素と低換気が,心停止やCO2 ナルコーシスの原因となり,迅速かつ的確な救急初期対応が求められる.
・重症度に応じて,人工呼吸管理や非侵襲的陽圧換気療法(NPPV),ネーザルハイフローの適応を検討する.
◆病態と診断
A病態
・呼吸不全とは,室内気下PaO2 が60Torr以下となる状態であり,PaCO2 が45Torr以下のⅠ型呼吸不全と45Torrを超えるⅡ型呼吸不全に分類される.呼吸不全が1か月以上続いた状態は慢性呼吸不全と定義される.
・慢性呼吸不全の増悪を起こしうる疾患としては,COPD,重症喘息,間質性肺炎,肺結核後遺症,気管支拡張症,神経筋疾患などがある.
・増悪の最も多い原因は,ウイルス・細菌感染による呼吸器感染症である.そのほかに心不全,気胸,肺塞栓症,誤嚥などがある.
B診断
・呼吸困難,咳嗽,喀痰の増加などの症状の悪化,意識レベル,バイタルサイン(血圧,心拍数,呼吸数,SpO2)の変動から増悪を疑い,原因検索・鑑別診断をすみやかに行う.
・検査は,胸部X線(うっ血性心不全,気胸,肺炎などの鑑別),血液検査では,血算(白血球分画含む),生化学,凝固系,Dダイマー,BNPなども測定し,感染症の合併や心疾患,肺血栓塞栓症などを鑑別する.また動脈血ガス分析を施行し,呼吸不全の状態を評価する.12誘導心電図,心エコーも心疾患鑑別に行う.
◆治療方針
基本治療は,増悪の原因除去と,酸素化や換気不全の是正である.直ちに酸素投与(CO2 ナルコーシスに留意)と静脈路確保,心電図,酸素飽和度のモニタ管理を行う.
A薬物療法
増悪原因により異なるが,頻度の高いCOPD増悪には,抗菌薬,気管支拡張薬,ステロイドが考慮される.