今日の診療
治療指針

肺水腫
pulmonary edema
遠藤智之
(東北医科薬科大学准教授・救急・災害医療学)

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治療のポイント

・意識レベル,SpO2,呼吸数,呼吸補助筋使用の有無,末梢循環などをすみやかに評価し,重症度に応じた酸素投与を行う.

・病歴,身体所見,肺・心臓超音波検査,12誘導心電図,胸部X線,CTなどで心原性か非心原性かを鑑別し,病態に応じた治療を開始する.

◆病態と診断

A病態

・肺水腫とは,肺毛細血管静水圧上昇による漏出液や肺血管透過性亢進による滲出液が,リンパドレナージ能力を超えて肺血管外に貯留する病態をいう.

B原因

1.心原性肺水腫

・心機能低下,弁膜症,後負荷の急激な増大,過剰な輸液負荷などにより肺毛細血管圧が上昇し,水分が肺血管外に漏出することで生じる.

2.急性呼吸促迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome)

・主に炎症によって肺毛細血管透過性が亢進し,滲出液が間質や肺胞に移動することで生じる.

・肺の直接障害として,ウイルス性肺炎,細菌性肺炎,ニューモシスチス肺炎,誤嚥性肺炎,溺水,気道熱傷などがある.

・間接障害として肺炎以外の敗血症,重症膵炎,輸血,多発外傷などがある.

3.陰圧性肺水腫

・主に上気道の高度狭窄によって,きわめて強い自発吸気努力を生じ,胸腔内圧が過度な陰圧となり肺胞に強い陰圧がかかった際に水分が肺血管外に移動することで生じる.

4.再膨張性肺水腫

・気胸や胸水によって数日以上虚脱した肺に対して胸腔ドレナージを行い,急激に虚脱肺を拡張させた際に,拡張した肺の血管透過性が亢進し肺水腫が生じる.

5.神経原性肺水腫

・重度脳障害(重症頭部外傷,くも膜下出血など)を発症した際に,多量の内因性カテコールアミンが放出されることにより肺水腫を生じるとされるが,明確な機序は不明である.

C診断

・肺水腫に陥ると拡散障害による低酸素血症となる.肺胞内への水分の移動が起きれば,聴診では断続性水泡音を聴取する.

・肺超音

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