今日の診療
治療指針

CO2ナルコーシス
CO2(carbon dioxide)narcosis
一二三亨
(聖路加国際病院・救急部医長(東京))

治療のポイント

・CO2 ナルコーシスは高炭酸ガス血症を伴い意識障害を呈する状態である.

・病態としては,換気血流比不均等増大による死腔量の増大とホールデイン効果が重要である.

・まずABC(Airway,Breathing,Circulation)の評価を行う.

・自発呼吸が減弱している場合には直ちに補助換気を行う.

・自発呼吸の回復が不十分な場合には非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)による呼吸管理を考慮する.

 CO2 ナルコーシスは高炭酸ガス血症を伴い意識障害を呈する状態である.欧米では“acute hypercapnic respiratory failure”との呼称が一般的であり,CO2 ナルコーシスはacute hypercapnic respiratory failureに意識障害を呈した状態といえる.

◆病態と診断

A病態

・1940年代から,慢性的な高炭酸ガス血症を伴う呼吸不全患者では,PaCO2 の上昇では呼吸促進のドライブがかからないため,低酸素による刺激で換気が保持されている.高濃度の酸素吸入は,この低酸素換気刺激を減弱させるため,さらにPaCO2 が上昇しCO2 ナルコーシスが発症する,と考えられてきた.

・しかしながら,現在ではCOPD患者においては,①酸素投与による換気血流比不均等増大による死腔量の増大(もともと低酸素性血管収縮が起こることにより換気血流比を適正に保つように調節されているのだが,高濃度酸素の投与によって低酸素性血管収縮が解除されて換気血流比が増悪してしまう),②ホールデイン(Haldane)効果(CO2 がデオキシヘモグロビンに比べてオキシヘモグロビンにそれほど強く結合しないために,ヘモグロビンのCO2 に対する親和性が低下し,酸素濃度の上昇に伴って二酸化炭素解離曲線が右方にシフトすることで現れる),③分時換気量の低下の機序が考えられている.

B診断

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