今日の診療
治療指針

過換気症候群
hyperventilation syndrome
松嶋麻子
(名古屋市立大学大学院教授・救命救急医療学)

頻度 情報なし

治療のポイント

・過換気症候群は救急外来で遭遇する頻度の高い症候群である.過換気症候群と診断する前に,代謝性アシドーシスによる呼吸性代償など,ほかの重症病態がないかを慎重に確認することが重要である.

◆病態と診断

A病態

・過換気症候群は不安や緊張により呼吸が速くなり(過呼吸),血液中の二酸化炭素分圧が低下した結果,呼吸性アルカローシスとなって生じるさまざまな症状を指す.

・過呼吸にもかかわらず呼吸困難(息の吸いにくさ)を訴え,30回/分以上の著しい頻呼吸と不穏状態になることもある.

・呼吸性アルカローシスによって血管れん縮が生じ,頭痛やめまい,四肢のしびれを訴えるほか,筋肉のけいれん(テタニー)や“助産師の手”とよばれる特徴的な手の硬直がみられる.

・これらの症状によって患者の不安や緊張がさらに強まり,過呼吸が助長されるという悪循環に陥る.

B診断

・呼吸困難,動悸,胸痛,頭痛,めまいなど多彩な症状で救急搬送されることが多い.

・発症経緯と四肢のテタニーから過換気症候群を疑うが,急性心筋梗塞や急性大動脈解離,脳血管疾患などの心・血管系の重症病態についても慎重に鑑別する.

・病歴や身体所見からほかの重症病態を鑑別したあと,血液ガス分析で代謝性アシドーシスがなく,呼吸性アルカローシスであることが確認できれば過換気症候群と診断する.

・救急搬送の途中で落ち着き,来院時に呼吸性アルカローシスが改善している場合には,安易に過換気症候群と診断せず,同様の症状を呈するほかの病態も検討する.

◆治療方針

 過換気症候群と診断できれば特別な治療は必要としないが,患者は呼吸困難から「死ぬかもしれない」という不安と恐怖を感じていることが多いため,不安を除くように声をかける.

 過呼吸と不穏が治まらない場合は,以下の投薬で鎮静を試みてもよい.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)ヒドロキシジン(アタラックス-

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