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GL急性腹症診療ガイドライン2015
治療のポイント
・腸閉塞では,循環障害を伴う絞扼性腸閉塞および腸管壊死の診断が最も重要である.診断は造影MDCTを用いる.
・開腹歴のない場合でも,原因不明の腸管閉塞と腹痛を認める場合には,内ヘルニアによる腸閉塞を疑う.
・循環障害を伴う腸閉塞では緊急手術が第1選択となる.循環障害のない腸閉塞では,経鼻胃管やイレウス管による減圧処置で手術を回避できる場合がある.
・大腸癌による腸閉塞では,手術までの処置としてステント留置が行われる場合がある.
◆病態と診断
A病態
・機械的腸閉塞は腸閉塞,機能性(麻痺性)腸閉塞はイレウスと定義され,前者は閉塞部の循環障害の有無によって絞扼性腸閉塞と単純性腸閉塞に区分される.
・閉塞の原因は,術後の癒着や瘢痕性索状物が最も多いが,手術既往がなくとも,腫瘍,内ヘルニア,鼠径ヘルニア,大腿ヘルニア,軸捻転,腸重積などがある.
・絞扼性腸閉塞は,絞扼により静脈の還流障害,動脈血流の低下の順で進行し,腸管壊死,腸管穿孔,腹膜炎,敗血症性ショックに至る病態である.
B診断
・診断は,腹部単純X線検査(立位,臥位)で拡張腸管の部位,鏡面像,遊離ガス像の有無を確認し,鼠径部を含む腹部MDCT(multi-detector row CT)で原因診断を行う.
・問診と腹部診察で絞扼性腸閉塞が疑われる場合には,造影MDCTで循環障害の有無を確認する.
◆治療方針
循環障害を伴う腸閉塞では緊急手術が第1選択となる.単純性腸閉塞では,経鼻胃管やイレウス管による消化管減圧処置と十分な輸液で治療を開始する.保存的治療で改善する場合が多い.保存的治療中の腹痛や発熱の出現や,改善がみられない場合は緊急手術の適応である.大腸癌による腸閉塞では,消化管の減圧処置後に根治手術を行う.
術後腸閉塞に対しては,絞扼や腸管壊死の所見がなければ,まずは経鼻胃管やイ