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腹腔内出血(非外傷性)
non-traumatic intraperitoneal bleeding(non-traumatic intraabdominal hemorrhage)
武野慎祐
(宮崎大学医学部附属病院病院教授・消化管・内分泌・小児外科)

治療のポイント

・輸液ルートを確保し,バイタル値チェック,可能であれば病歴の詳細(特に婦人科系疾患による腹腔内出血の場合に妊娠や月経について)を確認する.

・腹部超音波検査による出血量の評価を迅速に行い,状態が許せば腹部造影CT検査による責任病変の同定を行う.

・緊急止血はIVRもしくは外科的止血術が基本であるので,対応可能な施設における経過観察もしくは迅速な治療が望ましい.

◆病態と診断

A病態

・非外傷性腹腔内出血の原因疾患として,腹部大動脈瘤内臓動脈瘤などの破綻,異所性妊娠,卵巣出血や卵巣子宮内膜症性嚢胞破裂などの婦人科疾患,肝細胞癌など実質臓器悪性腫瘍破裂などが挙げられる.

B診断

・可能な限り詳細な病歴の把握に努める.

・バイタルサイン,血液検査や腹部超音波検査による迅速な出血量の推定と出血性ショックの評価を行う.

・状態が許せば造影CT検査による出血の責任病巣を同定し,治療方針を決定する.

・異所性妊娠の診断は,妊娠反応陽性で腹部超音波検査で子宮腔外に胎嚢,卵黄嚢,胎芽が確認できることである.異所性妊娠が除外されれば,出血性黄体嚢胞や卵巣出血を考える.

◆治療方針

 迅速に輸液ルート確保を行う.初期治療として,成人においては1Lの急速輸液を行い,バイタルサインなどで反応を確認ののちに輸血の必要性を検討する.重篤なショック状態であれば大量輸血プロトコール(MTP:massive transfusion protocol)に沿って輸血を開始することが推奨される.腹腔内出血の責任病変に対して,緊急手術やIVR(interventional radiology)による止血の治療方針を決定する.

 腹部大動脈瘤破裂に対しては,緊急でステントグラフト内挿術(EVAR:endovascular arterial repair)もしくは開腹下に人工血管置換術が施行される.出血性ショックの状態下においては

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