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溺水
drowning
早川峰司
(北海道大学病院准教授・救急科)

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治療のポイント

・気道に入った液体により肺の酸素化が悪化し,酸素投与や人工呼吸器管理を要する場合がある.

・淡水溺水でも海水溺水でも治療内容や予後に影響はない.

・溺水の受傷形態によっては,頭部外傷や頸椎/頸髄損傷などの外傷の合併にも注意を払う必要がある.

・脳血管障害や不整脈などの心疾患が溺水の誘因となる可能性も考慮する.

◆病態と診断

A病態

・溺水は液体が気道内に吸引され窒息/呼吸障害をきたした状態である.

・気道内に吸引された液体そのものや,サーファクタントの喪失,肺毛細血管-肺胞の透過性の亢進などの複合作用により,肺コンプライアンスの低下,右-左シャントの増大,無気肺,および非心原性肺水腫が生じる.

・水没時間が長い場合,低酸素性の心機能障害をきたす場合がある.

・低張性(淡水)溺水でも高張性(海水)溺水でも治療内容や予後に影響はない.

水没時間が長ければ低酸素から心停止に至る.

B診断

・受傷状況から溺水の可能性を考慮する.

・呼吸音や呼吸状態,胸部X線写真,胸部CTなどから総合的に判断する.

・意識がない場合は,自発呼吸や脈拍の有無をすみやかに確認する.

◆治療方針

 溺水の誘因となった疾患の有無,溺水の際に合併した外傷の有無を考慮しつつ,呼吸/循環への対処が中心となる.呼吸状態に合わせて,酸素投与や人工呼吸器管理を選択する.

A軽症

 胸部聴診や画像検査で異常がなく,酸素投与も不要な場合は,帰宅可能である.

B中等症

 胸部聴診や画像検査で異常を認め,酸素投与が必要な場合,入院経過観察が必要である.

C重症

 胸部聴診や画像検査で広範囲に異常を認め,高流量酸素投与や人工呼吸器管理が必要な場合,ICUでの管理が望ましい.人工呼吸器管理の際には,十分な呼気終末陽圧(PEEP:positive end-expiratory pressure)を導入する.急性呼吸促迫症候群(ARDS)と同様の臨

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