今日の診療
治療指針

集団食中毒(O157を含む)
mass food poisoning
森田正則
(堺市立総合医療センター・救命救急センター長(大阪))

頻度 あまりみない

治療のポイント

・患者トリアージと感染対策を考慮する.

・脱水対策のみで多くが自然治癒する.

・抗菌薬は安易に投与せず,重症または重症化が予想される場合にのみ検討する.

・止痢薬は基本的に使用しない.

◆病態と診断

A病態

・食中毒とは,食品に付着するなどして経口摂取された,細菌,ウイルス,寄生虫,自然毒,化学物質が原因で,嘔吐・下痢,腹痛,発熱などの症状をきたす疾患で,集団発生が認められる.

・ウイルス性では,小腸からの分泌物増加による水様性下痢が多い.

・細菌性では大腸粘膜の障害による,少量頻回の粘血便に,発熱や腹痛を伴う場合が多い.

・腸管出血性大腸菌(O157含む)は,2020年の報告では30例と少ないが,志賀毒素による溶血性尿毒素症候群を合併し,特に小児で重症化する(,「腸管出血性大腸菌感染症」の項参照).

・自然毒も消化管症状が主体でほとんどが自然治癒するが,フグや二枚貝では呼吸筋麻痺(,「フグ中毒」の項参照),イヌサフランでは多臓器不全をきたすなど,重症化するものがある.

B診断

・同じ食品を摂取した人に同様の症状が出ていないか聴取する.

・直ちに保健所へ届け出を行い(24時間以内),原因究明につなげる.

便の性状,発熱,腹痛,潜伏期,疑い食品などから原因を推定する.

・便培養は治療に影響しないことが多く,重症または重症化が予想される場合にのみ検討する.

・高齢者施設などでは,感染対策も兼ねてノロウイルス抗原検査も検討する.

◆治療方針

 集団食中毒を治療するうえで重要なのは,①トリアージ,②脱水対策,③ヒト-ヒト感染を起こす場合の感染対策である.ウイルス性だけでなく細菌性でも多くが自然治癒するため,抗菌薬投与は,重症または重症化が予想される場合に検討する.高齢者施設などでは,ノロウイルスなどヒト-ヒト感染をきたすものに対する感染対策が必要となる.

A軽症例

 食事制限は不要で

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