GL頭部外傷治療・管理のガイドライン第4版(2019)
治療のポイント
・外科的治療は重症例および中等症の一部に,軽・中等症には内科的治療が行われる.
・初診時軽症でも急速に悪化する場合がある.外傷に伴う凝固障害や頭蓋内血腫増大・再出血・脳浮腫の進行などにより短時間で変化する病態を見落とさない(タイミングを逸せぬrepeat CT).
・遅発性悪化例(talk and deteriorate)が増加しており高齢者頭部外傷,抗血栓薬内服例には注意を要する.抗血栓薬の一部は中和可能だが,中断・中和には慎重な検討を要する.
◆病態と診断
A病態
・局所性脳損傷は直接打撃や直線加速を伴う外力により生じる.急性硬膜外血腫,急性硬膜下血腫,脳挫傷,外傷性脳内血腫などの局所性脳損傷は,頭蓋内血腫や脳浮腫による頭蓋内占拠性病変とそれに伴う頭蓋内圧亢進を引き起こし,2次性脳虚血や脳ヘルニアをきたす.
・びまん性脳損傷は回転加速度による脳の広範囲の剪断力により生じる.脳振盪〔→,「脳振盪(SISを含む)」の項参照〕,びまん性軸索損傷,びまん性脳腫脹が主な病態である.
・局所性脳損傷は転倒など軽微な外傷においてみられる.びまん性脳損傷は転落や交通事故など高エネルギー外傷においてみられ,局所性脳損傷と混在する.
B診断
・受傷機転,意識レベル,瞳孔径・対光反射所見,麻痺など神経症状,バイタルサイン,頭部CTから病態と重症度を診断する.MRI(FLAIR画像,拡散強調画像,T2* 強調画像,磁化率強調画像)は頭部CTで診断困難なびまん性脳損傷に有用である.
◆治療方針
急性期治療は,①頭蓋内血腫など頭蓋内占拠性病変の制御,②全身管理と脳浮腫・脳腫脹による頭蓋内圧亢進の制御,③外傷性けいれん発作など付随する病態への対処に集約される.専門医へのコンサルトの目安は,「頭部外傷」の項(→)参照.脳実質損傷(脳挫傷,びまん性軸索損傷
関連リンク
- 今日の治療指針2023年版/脳振盪(SISを含む)
- 今日の治療指針2023年版/頭部外傷
- 治療薬マニュアル2023/D-マンニトール《マンニットール マンニットT》
- 治療薬マニュアル2023/チオペンタールナトリウム《ラボナール》
- 治療薬マニュアル2023/ホスフェニトインナトリウム水和物《ホストイン》
- 治療薬マニュアル2023/レベチラセタム《イーケプラ》
- 今日の治療指針2023年版/高血圧性脳症
- 新臨床内科学 第10版/(1)脳血管れん縮
- 新臨床内科学 第10版/くも膜下出血
- 新臨床内科学 第10版/1 脳動静脈奇形
- 今日の診断指針 第8版/高血圧性脳症・PRES・RCVS
- 今日の小児治療指針 第17版/頭蓋内出血