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脳振盪(SISを含む)
cerebral concussion(including second impact syndrome:SIS)
松前光紀
(横浜新緑総合病院・病院長)

Ⅰ.スポーツ関連脳振盪(sports-related cerebral concussion)

GL頭部外傷治療・管理のガイドライン第4版(2019)

治療のポイント

・特異的な治療法は確立されていない.

・予防と復帰プログラムの理解が大切である.

◆病態と診断

A定義・病態

・一過性の脳機能障害を伴う外傷と定義される.

・具体的には,頭部外傷により生ずる意識消失,健忘,集中力欠如,音過敏,頭痛(最も多い),めまい,身体の浮遊感ならびに不安定感などの精神心理学的異常や身体的自覚症状を訴え,これらの所見が可逆性の経過をたどる脳機能の障害である.

・受傷者側の危険因子として,女性と若年者が挙げられている.

・発生しやすい競技として,ラグビー,柔道,サッカー,アイスホッケー,ボクシング,ラクロス,アメリカンフットボール,体操などが挙げられている.

・練習中より試合中の発生が多い.

B診断

・特異的な他覚的診断法や画像診断法はない.

・症状は多彩であり持続時間もさまざまである.実際のスポーツ現場では意識消失を伴わない脳振盪が大部分を占める.

・症状の遷延は,成人で2週間以上,小児で4週間以上継続するものと定義されている.

・小児では症状が遷延する症例が多い.

・年齢が13~17歳,女性,倦怠感があるといった因子は,症状が遷延する可能性があり注意が必要である.

・資格を有する医療従事者が行う評価法として,13歳以上を対象としたSCAT5(Sports Concussion Assessment Tool 5),12歳以下を対象としたChild SCAT5が用いられている.

・SCAT5は正常でもばらつきが生じる.個人の特性を把握する意味で,ベースラインの評価をオフシーズンなどに行っておくことが推奨されている.

・現場に有資格者がいない場合は,CRT5(Concussion Recognition Tool 5)が評価法とし

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