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手技

口腔顎顔面外傷
oral and maxillofacial injury
池田弘人
(帝京大学客員教授・救急医学)

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治療のポイント

・外傷初期診療のprimary surveyに従い診療し,airway(気道),circulation(循環)の異常に注意する.

・頭部外傷や頸椎損傷の合併の有無にも注意し,時間経過とともに症状が出現する可能性があるため継続的に監視する.

・secondary surveyでは,口腔顔面を解剖学的に診察し,眼球,内耳などの感覚器傷害の有無にも注意を払う.

・早期に歯科口腔外科,形成外科,眼科,耳鼻咽喉科などの専門診療科とコンタクトをとり連携をはかる.

◆病態と診断

A病態

・顔面や口腔は露出部であり直接外力による損傷が多い.

・口腔内出血で気道閉塞誤嚥を起こす可能性がある.

・顔面は血管が多く分布し,動脈は多岐にわたり吻合し血流が豊富なため,損傷により持続的大量出血が生じやすく,出血性ショックをきたす危険性がある.特に額部,眉毛部,鼻部,口唇部の開放創では圧迫止血できないことが多い.

・鼻根部,頬部,耳介下部,顎部の創傷では,涙小管,顔面神経,耳下腺,顎下腺などの損傷にも注意を払う.

B診断

・診断には受傷機転と臨床所見が重要である.

・視診や触診でわかることが多いが,視覚異常や知覚運動障害の診断には問診が重要である.

・感覚器など重要器官の合併損傷の確認には,解剖学的位置関係を理解したうえで診察する必要がある.

神経損傷の診断には,視神経,動眼神経,滑車神経,三叉神経,外転神経,顔面神経,内耳神経,舌下神経などの神経学的診察が必要である.

・画像検査はCT検査が有用で,頭部外傷や頸椎損傷の疑いがあればそれらの部位も検査し,合併損傷を否定する.顔面単純CTでは,骨折や眼球損傷,副鼻腔内血腫,内耳損傷,創内異物の有無を確認できるが,口腔鼻腔からの活動性出血が持続する場合は,気道確保のうえで造影CT撮影で出血源検索することを考慮する.

◆治療方針

 確実な気道呼吸管理の下で,局所

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