今日の診療
治療指針
救急

脊髄損傷
spinal cord injury
宮崎正志
(大分大学診療准教授・整形外科学)

治療のポイント

・脊髄損傷の可能性がある患者は2次損傷を防ぐために頸椎カラーを装着し全身を固定して搬送する.

・四肢の筋力と体幹や四肢の知覚の状態より脊髄損傷の障害の高位と程度を評価する.

・頸髄損傷に伴う呼吸や循環の管理が重要である.

・脱臼や脱臼骨折例や脊椎に不安定性を認める場合ではすみやかに手術が必要とされるため,迅速に専門医へコンサルトする.

◆病態と診断

A病態

・外力により脊髄実質の機械的損傷が起き,数時間後には出血性壊死を引き起こし病変が拡大して,脊髄実質の虚血,浮腫,炎症性変化による2次的変化が加わる.脊椎の骨折や脱臼に伴うことが多いが,骨傷を伴わない脊髄損傷も多い.

・受傷直後より脊髄の伝導機能が断たれ,運動,感覚機能および自律神経機能も障害される.

B診断

1.初期診療と神経学的評価

・重度の高エネルギー損傷や,脊椎の痛みや四肢のしびれ,痛み,麻痺を訴える場合は脊髄損傷の合併を念頭におき治療にあたる.

・脊髄損傷の急性期の死亡の原因として誤嚥とショックが挙げられるため,呼吸状態や血圧などのチェックと安定化を行う.同時に神経学的評価(運動麻痺の評価,感覚障害の評価,反射の評価)を行い,脊髄損傷の障害の程度と高位を評価する.

2.画像診断

・高エネルギー損傷の場合は合併損傷のスクリーニングの意味も含めて全身CTを撮像する.

MRIは脊髄の損傷部位や2次的変化の範囲,軟部組織損傷の把握に有用である.骨傷を伴わない頸髄損傷でもMRIで靭帯損傷を示唆する所見がある場合は,頸椎の動態(前屈や後屈位)のX線撮影を行い脊椎の不安定性がないかを確認する必要がある.

◆治療方針

A急性期

1.搬送と初期治療

 脊髄損傷の可能性がある患者は,頸椎カラーを装着しバックボードを用いて全身を固定して搬送する.C4髄節高位以上の頸髄損傷患者では,呼吸筋麻痺のため肺活量が低下し人工呼吸器管理が必要となる.また,気道内分泌

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