頻度 情報なし
治療のポイント
・日本では刃物による損傷が多く,銃創はまれで,また自傷行為が多いことが特徴である.
・気道確保と循環動態安定が最優先で,循環動態不安定な症例は緊急手術の適応である.
・頸部局所については損傷レベル(Zone)と身体所見(sign)を把握する.近年は造影CTによる画像診断の重要性が増している.
・自傷の場合は精神面の管理も必要なため,創が浅くても安易に帰宅させてはならない.
◆病態と診断
A病態
・刺創,切創,銃創,杙創があり,日本では切創が大半である.
・刺創と銃創は,創は小さいが深部損傷をきたしやすく,注意が必要である.
・頸部にはさまざまな重要臓器が密集し,小さな傷でも複数の重篤な損傷を生じやすい.
・最も重篤かつ緊急性を要するものは,気道の異常と出血性ショックである.
B診断
・まず解剖学的に3つのZoneに分けてとらえるが,従来はZone別に検査・治療方針を検討したのに対し,近年は手術適応に関しては意識しない方向にある(no zonal approach).Zoneは,念頭におくべき損傷臓器を示唆するものにとどめたほうがよい.適切な気道確保と循環動態安定が得られれば,積極的に造影CT検査を行う.
・Zone Ⅰ:鎖骨から輪状軟骨レベルまで.主要血管,迷走・反回神経,気管,食道,甲状腺のほか,鎖骨下動静脈や肺尖部の損傷,腕神経叢損傷,また突き下ろした創では上縦隔の臓器損傷も念頭におき,血気胸にも注意する.
・Zone Ⅱ:輪状軟骨から下顎角レベルまで.主要血管のほか,気道では声門周囲や喉頭蓋の損傷,神経では副神経損傷も念頭におく.直視下に確認しやすい.
・Zone Ⅲ:下顎角から頭蓋底レベルまで.主要血管のほか,中・下咽頭,顎下腺,舌下神経,副神経などの損傷も念頭におく.直視下での検索は困難である.
・次に身体所見(hard/soft sign)をとらえる.
・Hard