頻度 割合みる
治療のポイント
・鎮痛を十分に行うことが最も重要である.
・高齢者では転倒程度でも損傷することがあり,また抗凝固薬や抗血小板薬の内服のために血胸などの進行を伴うこともあるため,注意すべきである.
・疼痛コントロールや症状など,経過観察が必要である.
◆病態と診断
A病態
・胸部への外傷によるものが多く,ほとんどは交通事故などの鈍的外傷に伴うものである.
・高齢者では転倒などの軽微な外傷でも肋骨骨折に至る場合もあり,受傷機転がはっきりしない例もある.
・慢性的な咳や,スポーツによって引き起こされることもある.高齢者では悪性疾患の転移による病的骨折や,小児では虐待の可能性に留意する.
・肋骨は左右12対からなる.第1~3肋骨は周囲の骨格や筋に保護されており,また第11~12肋骨は胸骨に付着しておらず可動性が高いため,それぞれ骨折になりにくい.
・3つ以上連続する肋骨が2か所以上骨折に至った場合,その部位が呼吸性に浮動している場合はフレイルチェストとよばれる.
・無気肺や肺炎を合併することや,骨折に伴った血管損傷や,骨折端による臓器損傷も合併することがあり,経過観察も重要である.
B診断
・自覚的所見として胸郭の痛みや,呼吸時に疼痛の増悪がみられる.他覚的には腫脹や皮下血腫を伴うこともある.触診や打診,あるいは手掌で広く胸郭に触れた場合に,疼痛の増強や軋轢音を感じることで判断が可能である.
・胸部X線写真が広く用いられるが感度は高いものではない.ただし外傷性気胸や血胸を伴うこともあり,その判断にも有用である.また骨折部位は時間経過とともにX線上で明らかになることもあり,初診時にはその点にも言及すべきであろう.
・CTの診断能は高く,肋骨のみならず,特に臓器損傷を疑う場合には必須である.
・超音波検査でも損傷部位の同定や,合併する気胸や血胸診断が可能となる場合もあるが,診断には習熟が必要である.