今日の診療
治療指針
救急

外傷性気胸・外傷性血胸
traumatic pneumothorax and hemothorax
久志本成樹
(東北大学大学院教授・救急医学)

治療のポイント

・呼吸・循環不全の原因となる緊張性気胸と大量血胸,開放性気胸は,迅速な診断と対応が必要である.

・緊張性気胸はバイタルサインと身体所見に超音波検査を組み合わせて診断し,胸腔穿刺・ドレナージを行う.

・大量血胸は,胸腔ドレナージとともに出血量と循環動態から外科的治療を考慮する.

・仰臥位X線前後像では診断できない潜在性気胸はまれでなく,陽圧呼吸患者では十分な注意を要する.

◆病態と診断

・気胸と血胸は,鈍的・穿通性胸部外傷のいずれにおいても頻度の高い病態の1つである.多くの症例では両者を合併する.

・生理学的アプローチにより呼吸・循環に異常をきたしうる外傷の検索と治療を行うprimary surveyと蘇生,解剖学的に損傷を検索するsecondary surveyの2段階でとらえ,緊張性気胸,開放性気胸,大量血胸はprimary surveyで診断・治療する.

A気胸

1.開放性気胸

・胸壁に気管径の2/3以上の開放創があると,正常の気道よりも抵抗の低い胸壁欠損部から吸気のたびに空気が胸腔内に流入する.胸腔内圧と大気圧が同じレベルとなり,肺は虚脱し低換気と低酸素が生じる.

・胸壁開放創と胸腔との交通が認められることで診断する.開放創が大きくないときには吸気時に創から血液・空気が胸腔内に吸い込まれ,呼気時には噴出することから診断できる.

2.緊張性気胸

閉塞性ショックを呈する気胸を緊張性気胸といい,最も緊急度の高い外傷病態の1つである.緊張性気胸は,肺・胸壁に生じた一方弁によって,空気が胸腔内に閉じ込められて発生する.胸腔内圧が上昇し静脈還流が障害され循環不全に陥る.

・身体所見で診断すべきであり,胸部X線を待って治療が遅れるようなことがあってはならない.呼吸・循環不全の存在と,視診での患側胸郭膨隆,頸静脈怒張,聴診の一側呼吸音の減弱・消失,触診での皮下気腫,頸部気管偏位,打診の鼓音,超

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