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肺損傷
pulmonary injury
相星淳一
(東京女子医科大学八千代医療センター教授・救急科)

治療のポイント

・肺挫傷の治療は,呼吸管理,合併する肋骨骨折などに対する疼痛コントロール,肺理学療法が主体である.

・外科的治療の介入は少ないが,大量の気道内出血,増大する肺内血腫,感染した外傷性嚢胞は手術治療の適応である.

◆病態と診断

A病態

・肺実質損傷の形態には肺挫傷と肺裂傷がある.肺組織の損傷や炎症の過程で,肺胞や間質に漏出した血液や浸出液がガス交換を障害する.また,肺挫傷は急性呼吸促迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome)の発症に対するリスク因子の1つである.

・肺裂傷は組織の連続性が失われた状態で,裂傷部位に血腫や空気が貯留した病態を肺内血腫,外傷性肺嚢胞(TTP:traumatic pulmonary pseudocyst)とよぶ.

・肺挫傷の原因は主に鈍的外傷(交通事故や墜落など)で,血胸,気胸,胸壁損傷(肋骨骨折,フレイルチェストなど)を伴う.また,爆傷や穿通性外傷の衝撃波でも発症する.

・小児の骨性胸郭は弾性に富んでいるので,骨折を伴わない肺挫傷が多い.

B診断

・肺損傷の症状は呼吸困難,喀血,血痰などで,その他の所見として頻呼吸,チアノーゼ,呼吸音の減弱,湿性ラ音の聴取,低酸素血症,高二酸化炭素血症などを認める.

胸部CT検査は肺挫傷の診断に対する感度,特異度が高い.肺挫傷の画像所見として,解剖学的区域に一致しない境界不明瞭な斑状影,網状影を認めることが多い.また,肺内血腫や外傷性嚢胞では,高濃度の腫瘤様陰影や空洞形成の所見を示す.

・肺実質の20%以上に肺挫傷を認める場合,8割以上の症例でARDSを発症する.

◆治療方針

A保存的治療

 肺挫傷の治療は呼吸管理と支持療法が主体である.肺挫傷は受傷後24時間以内に悪化することが多いので,呼吸機能のモニタリング(パルスオキシメーター,動脈血ガス分析など)を行う.低酸素血症に対して

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