頻度 (全外傷の0.3~0.5%,胸部外傷後の3%)
治療のポイント
・気管・気管支損傷は致死的な転帰を経ることもあり,早期の診断,治療がその救命につながる.受傷後に縦隔・皮下気腫を認めた場合,その存在を疑い早急に精査を行う.
・初期対応として気道確保が優先される.呼吸が保てない状況では損傷部を越えての気管内挿管や分離肺換気,それらが困難な場合は体外式膜型人工肺(ECMO)が必要となる.
・外科的治療が必要となることもあり,早急に高次医療機関への転院搬送を行うことが望ましい.
◆病態と診断
A病態
・気管・気管支損傷は,外傷により胸部または頸部に強い外力が加わることで起こる比較的まれな病態で,周辺臓器の損傷を伴うと死亡率は30%以上と報告されている.
・頸部気管では刺創など開放性損傷が多いが,胸腔内の気管・気管支では鈍的外傷による閉鎖性損傷が多く80%以上が気管分岐部周囲に起こる.メカニズムとして,気管分岐部は解剖学的に固定性が高く外力による牽引力が働きやすいこと,声門が閉鎖された状態で胸郭が急激に圧迫され気道内圧が上昇することが関与している.
・損傷の程度に応じて軽微な症状から呼吸不全まできたし,損傷部位が胸腔と交通すると緊張性気胸により呼吸・循環不全となる.
B診断
・自覚症状は,呼吸困難,チアノーゼが多く,喀血,血痰の頻度は低い.他覚的所見は皮下気腫,縦隔気腫の頻度が高く,血胸,気胸もみられる.
・X線およびCTは必須で,X線で皮下気腫,血気胸が確認されるが,詳細を評価するためにはCTが必要となる.CTでは皮下気腫,縦隔気腫,気胸だけでなく気管の損傷部位,縦隔内臓器の損傷が評価できる.
・確定のため気管支鏡検査が必要で,損傷の程度および範囲が確認できる.
◆治療方針
A気道管理
・呼吸管理が優先されるが呼吸状態が問題なければ慎重に経過観察を行う.無理な挿管で損傷を惹起することがある.
・損傷部の安静を