頻度 情報なし
治療のポイント
・鈍的心損傷の除外には12誘導心電図とトロポニン検査が有用である.
・心筋挫傷と診断すれば24時間の持続心電図モニタリングを行う.
・心タンポナーデによる閉塞性ショックに対しては心嚢穿刺または心嚢開窓術を行う.
◆病態と診断
A病態
・心損傷は鈍的心損傷と穿通性心損傷に分けられる.
・鈍的心損傷は直達外力や心内圧上昇により生じる.臨床症状に乏しいものから心筋挫傷による非定型的な心電図異常,弁膜損傷による急性左心不全,致死的な心破裂など,さまざまな損傷形態を呈する.
・穿通性心損傷はわが国では刃物による損傷が多く,心タンポナーデや心膜損傷部を介した大量血胸を呈する.
・心タンポナーデによる閉塞性ショックは60~100mLの心嚢内血液貯留でも発症しうる.
・穿通性心損傷の多くが現場で死亡するが,生存して来院し,すみやかに修復術を行えれば予後は良好である.
B診断
1.鈍的心損傷
・胸部外傷,特に胸骨骨折や胸椎骨折を認める場合は鈍的心損傷を疑い,12誘導心電図とトロポニン検査によるスクリーニングを行う.
・不整脈やST変化などの心電図異常を認めず,トロポニン陰性であれば心筋挫傷を除外できる.
2.穿通性心損傷
・創が前胸部のSauer's danger zoneにあれば損傷を疑う.心タンポナーデや大量血胸を認めれば穿通性心損傷の可能性が高い.
・CT検査は有用であるが,循環動態が不安定な場合は手術を優先する.
3.心タンポナーデ
・「外傷初期診療ガイドラインJATEC」のprimary surveyでショックの認知とFAST(focused assessment with sonography for trauma)での心嚢液貯留により診断する.
・古典的な理学的所見としてBeckの3徴(低血圧,心音減弱,頸静脈怒張)があるが,出血性ショックを合併している場合は必ずしも頸静脈怒張を認めない