治療のポイント
・横隔膜損傷の多くは,ほかの重症な臓器損傷を合併していることが多く,外傷手術時には横隔膜の適切な術中評価が求められる.
・横隔膜損傷は見逃し損傷の代表格である.
・疑うことが診断の第一歩であり,単純X線検査の感度・特異度は低く,multi-detector row CT(MDCT)検査での多断面CT画像を注意深く読影することが診断には必要である.
・循環動態が安定している患者で横隔膜損傷を疑う場合には,診断的腹腔鏡手術を考慮してもよい.
◆病態と診断
A病態
・横隔膜は胸腔と腹腔をつなぐ薄い筋・神経組織で構成されており,胸部外傷および腹部外傷どちらの損傷でも起こりうる.
・左側損傷が右側損傷の3倍多い.その理由としては,右側には肝臓があること,傷害事件(鋭的外傷)では右利きの加害者が多いことに起因している.
・右側の刺創では,横隔膜の欠損部が小さいために肝臓で横隔膜欠損部が被覆され,早期には