今日の診療
治療指針
救急
手技

穿通性腹部外傷
penetrating abdominal trauma
岩瀬史明
(山梨県立中央病院・救急業務統括部長)

頻度 情報なし

治療のポイント

・循環動態不安定,腹膜炎,臓器脱出,刃物が刺さった状態は緊急開腹手術の適応である.

・安定した患者では,創局所の探索(LWE),CT,継続的身体診察により手術の適応を決定する.

・LWEに慣れていなければ,転院搬送を考慮したほうがよい.

・創が腹膜を貫通していても,循環動態が安定していて症状がなければ保存的に経過をみることが可能である.

◆病態と診断

A病態

・創部が腹膜を貫通していない場合は腹部の軟部組織損傷であり,腹膜を貫通している場合には,腹腔内臓器損傷の可能性がある.実質臓器の損傷であれば出血,腸管損傷であれば腹膜炎などの病態を呈する.腎・尿管・膀胱損傷では尿漏となる場合もある.

・銃創では弾丸が腹腔内にとどまっていることもある.

・胸腹部境界域,腹部前面,側腹部・背部の3領域で対応が異なるので,別々に病態を考えるべきである.

・胸腹部境界域では,横隔膜損傷を伴う胸腔内臓器損傷の可能性を考慮する.

・側腹部・背部の損傷では,結腸,腎臓,副腎などの後腹膜臓器損傷を考慮する.

B診断

・病歴の聴取において,成傷器,受傷時の体位,受傷現場での出血量の確認が重要である.

・創は1つとは限らないので脱衣し,見逃しのないようにする.

腹腔内の液体貯留(出血)の有無を確認するためにeFAST(extended Focused Assessment with Sonography for Trauma)を行う.eFASTは迅速に実施でき,循環動態が不安定な患者に対しても施行が可能である.

・体幹部の造影CTは,腹膜損傷の有無,腹腔内の臓器損傷の有無を確認できる.受傷機転から胸部,骨盤部まで損傷が及んでいる可能性が否定できない場合には,広く撮影するべきである.特に側腹部,背部の穿通創の場合は臓器損傷の有無を確認するのに有用である.

・創局所の探索(LWE:local wound exp

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