今日の診療
治療指針
救急
手技

鈍的腹部外傷
blunt abdominal trauma
今 明秀
(八戸市立市民病院・院長(青森))

治療のポイント

・循環動態で手術/非手術療法が決まる.

・循環動態が不安定な場合はダメージコントロール手術を基本とする.

・循環動態が安定している腹部外傷疑いにはCT検査を行う.

・CT検査で緊急処置(手術やTAE)か非手術療法か決める.

◆病態と診断

A病態

・出血によるショックと,消化管損傷による腹膜炎がある.

・蘇生を必要とするショックと循環動態が安定している状況に分けて考える.

B診断

・循環動態が安定しているか,ショックかをバイタルサインと初期輸液1Lに対する反応でみる.

・冷たく湿っている皮膚,顔色不良,血圧低下,頻脈,頻呼吸よりショックを見抜く.外傷によるショックの90%は出血性ショックである.

・出血の原因は三大出血源にある.FAST(focused assessment with sonography for trauma)で腹腔内出血,ポータブルX線で血胸と骨盤骨折を診断する.

・腹膜炎の原因は腸管損傷と膵臓損傷にある.腹部身体所見と受傷機転から造影CT検査の必要性を決める.腹膜炎の診断は造影CT検査による.

◆治療方針

A循環動態が不安定な場合

 急性期治療において,優先すべきは迅速な止血である.Primary surveyを行う.C(循環)の異常があり,初期輸液後も循環動態が不安定であれば,FASTが開腹術の根拠となる.開腹止血術はprimary surveyの一環であり,Cの異常を解決するための蘇生的開腹術をdamage control surgeryを基本として行う.すみやかな輸血開始と過剰輸液の回避,massive transfusion protocol,低体温の予防などのダメージコントロール戦略に基づく.

B循環動態が安定している場合

 外傷患者の多くは腹部所見が不正確であるので,腹痛,腹部所見に加えて受傷機転やシートベルト痕の状況から腹部外傷をわずかでも疑ったらCT検査の適

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