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手技

消化管損傷(十二指腸を含む)
injury of the alimentary tract(including the duodenum)
佐々木純
(昭和大学江東豊洲病院准教授・救急診療科)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・消化管損傷では消化管内容物により腹膜炎や縦隔炎をきたす.診断により外科治療が必要となる.

・出血や感染により全身状態が不安定な場合は,ダメージコントロール手術(DCS)を行う.

・各臓器の損傷程度・部位・範囲に応じた術式を選択する.

◆病態と診断

A病態

・急性期では消化管内容物の漏出による腹膜炎や縦隔炎による炎症,感染,消化管損傷に併存する血管・他臓器損傷による出血が予後に影響を与える.

B診断

・ショックで循環動態不安定のため緊急手術となった場合は,術中に損傷検索を行い,消化管損傷が診断される.

・循環動態が安定している場合には,腹膜刺激症状などの身体所見,腹部造影CT検査などにより消化管損傷が診断される.

・食道損傷や十二指腸損傷が疑われた場合では経口造影剤(アミドトリゾ酸)による消化管造影や内視鏡検査により診断することもある.

◆治療方針

 急性期では損傷に伴う出血のコントロールが最優先され,次に消化管内容物の漏出に対する治療,汚染防止が重要である.

A循環動態が不安定であり,腹腔内の液体貯留を認めた場合

 直ちに開腹手術を行う.消化管損傷を認めた場合,代謝性アシドーシス,凝固異常や低体温などがあれば,出血と体腔内汚染に対するダメージコントロール手術(DCS:damage control surgery)を行う.

B循環動態が安定しており,身体所見や精査により消化管損傷が診断された場合

 患者の状態と消化管損傷の損傷程度・部位・範囲により適切な治療を行う.

1.食道損傷

 創周囲のデブリードマン後,創の大きさや汚染状況に応じた縫合閉鎖とドレナージを行う.発見や診断の遅れで高度な炎症を伴っている場合は,ドレナージのみ行うこともある.受傷から24~48時間以内の小さな損傷で循環動態が安定しており,縦隔炎や縦隔気腫が存在しなければ非手術療法が選択されることもある.

2.胃損

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