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手技

肝損傷
liver injury
北村伸哉
(君津中央病院・救命救急センター長(千葉))

治療のポイント

・non-responderおよびtransient responderは開腹止血術を優先する.

・responderでは造影CTにて外傷性動脈瘤損傷形態分類を確認する.

・responderでは確認された血管外漏出像や外傷性動脈瘤に対して経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を行う.

・responderの多くは非手術療法(NOM)を完遂できる.

◆病態と診断

A病態

・肝臓は生体内最大の実質臓器であり,心拍出量の25%の血液が流入する.したがって,外力を受けると肝実質だけでなく,それを取り巻く血管も損傷を受ける場合があり,時に大出血を引き起こす可能性がある.

・一方,大部分の器官は右側を中心に胸腔下に格納・保護されており,緊急開腹術に至る頻度を減じている.また,肝臓の表面は50μmほどの厚い漿膜で覆われ,外力に対して抵抗性があり,実質内だけの損傷を負うこともある.

B診断

・ERにおける重要ポイントはショックの認知である.primary survey(PS)においてショックを認知した場合はその安定化に努め,同時に原因を追求する.PSでは迅速超音波検査FAST:focused assessment with sonography for trauma)と胸部・骨盤の単純X線検査を行う.FAST陽性,腹腔内出血が確認されれば,腹腔内臓器の損傷が疑われるが,もちろん,肝損傷とは限らない.

・触診での右季肋部の圧痛や視診での腹部のハンドル痕,胸部X線写真による右下位肋骨骨折は肝損傷を疑わせる所見である.

・血液検査での肝酵素(AST,ALT)の上昇は肝損傷を強く疑う.

・循環動態が安定すれば,secondary survey(SS)における造影CTで肝損傷の確定診断が得られる.造影CTは2相撮影する.早期(動脈相)では血管外漏出像や動脈瘤を確認することができ,門脈相では静脈系の評価が可能であ

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