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救急
手技

膵損傷
pancreatic injury
庄古知久
(東京女子医科大学附属足立医療センター教授・救急医療科)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・腹部外傷の診断には造影CT検査が必須である.動脈相と平衡相の2相の撮影が基本となる.膵周囲に造影剤の血管外漏出像がある場合は高次医療機関での手術が必要である.

・主膵管損傷の疑いがあるときは,緊急ERP検査が必要となる.

・薬物療法は「急性膵炎診療ガイドライン2021」に準じて行う.

◆病態と診断

・主に上腹部へ前方正面からの鈍的外力が加わり,膵臓が椎体部との間で挟まれ受傷する.自転車運転中のハンドル外傷が有名であるが,シートベルト,転倒や対人接触による受傷も報告される.小児の腹部外傷でも発生している.腸間膜や十二指腸など,ほかの腹部臓器との合併損傷にも注意が必要である.

・膵損傷部から漏れ出た膵液にて周囲に強い炎症を惹起し,後腹膜や腸間膜に波及し組織の鹸化や出血,壊死を引き起こす.

・主訴は上腹部痛であるが,悪化すると腹膜刺激徴候が出現する.

・主に腹部CT検査にて診断される.単純CTでは見逃されることもあり,造影CTにて判断されるべきである.遅発性に損傷が明らかになることもあり,血清膵酵素(アミラーゼやリパーゼ)の上昇時はCTの再検も行うべきである.ただし血清アミラーゼ値は膵損傷の重症度と一致しないので注意する.

・超音波検査でも注意深く,膵周囲の液体貯留を検出できれば診断に近づけるが,通常のFAST(focused assessment with sonography for trauma)検査のみでは見逃される危険がある.

・主膵管損傷が疑われる場合は内視鏡的逆行性膵管造影(ERP:endoscopic retrograde pancreatography)検査が必要である.2021年の主膵管損傷のある膵損傷の多施設全国調査報告の結果からも,血行動態の安定している場合はERP検査を実施することが推奨されている.ただし小児の場合,限られた施設以外では学

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