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脾損傷
splenic injury
井上潤一
(日本医科大学武蔵小杉病院・救命救急センター長)

治療のポイント

・脾臓は血液をプールした臓器であり,損傷により失血死するリスクがある.

・脾臓は最大の免疫器官であり,できるだけ脾温存をはかる.

・循環動態が不安定であれば原則開腹手術による脾摘術を行う.安定していれば造影CTを撮影し,カテーテル治療を含む非手術治療(NOM)を考慮する.

・造影CTで造影剤の血管外漏出や出血する可能性が高い仮性動脈瘤を認めた場合は,経カテーテル的脾動脈塞栓術を行う.

・NOMを選択した場合,受傷後3~14日に再出血をきたす場合がある.

・脾臓を摘出した場合は,脾摘後重症敗血症(OPSI:overwhelming post splenectomy infection)を予防するためワクチン接種と患者への教育を必ず行う.

◆病態と診断

A病態

・脾臓は左上腹部背側に位置し,上腹部や左背部に外力が加わるような受傷機転で発生する.左下位肋骨骨折を認める場合は脾損傷の合併に注意する.

・脾動脈と短胃動脈からの豊富な血流と,実質内に血液をプールする機能を有することにより,損傷すると多量の出血をきたす.

B診断

・迅速簡易超音波検査(FAST:focused assessment with sonography for trauma)を行い,脾周囲含め液体貯留の有無について検査する.

・FAST陽性,もしくは脾損傷が疑われる受傷機転がある場合は必ず腹部造影CT検査を行う.

・造影CT検査では脾臓の損傷形態,造影剤の血管外漏出,仮性動脈瘤を示唆する造影剤の貯留,腹腔内液体貯留の量について評価する.

・損傷形態は日本外傷学会脾損傷分類2008(Ⅰ型:被膜下損傷,Ⅱ型:表在性損傷,Ⅲ型:深在性損傷)に準じて分類する.

◆治療方針

 循環動態が不安定な場合は原則脾摘術を選択する.多発外傷・凝固障害・重症頭部外傷を合併する場合も,確実に止血するため原則脾摘術を選択する.

 造影剤の血管外漏出,仮性動

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