治療のポイント
・腎外傷の約半数に他臓器の合併損傷を伴うため,複数の専門科との連携が重要である.
・腎外傷が直接死因になることはまれで,生命予後を左右する他の臓器損傷の管理が重要である.
・骨盤部の外傷では,膀胱・尿道損傷の合併を念頭におき,血尿・尿閉・外尿道口からの出血・会陰部の皮下血腫などの確認が必要である.
◆病態と診断
A病態
・腎損傷は,交通事故・墜落転落・スポーツなど大きな外力による鈍的外傷が9割以上である.
・尿管損傷は,外傷はまれでほとんどが手術中の医原性損傷である.
・膀胱損傷は,下腹部に強い外力が加わる外傷性の場合と,骨盤内手術中の医原性損傷がある.損傷部位が腹腔と交通する腹膜内損傷と交通しない腹膜外損傷に分けられる.
・尿道損傷は男性に多く,骨盤骨折により前立腺部尿道の遠位が断裂する後部尿道損傷と,会陰部を強打することにより球部尿道を損傷する騎乗型損傷が多い.
・尿道カテーテル挿入時や泌尿器科経尿道手術による医原性尿道損傷は,のちに尿道狭窄の原因となることがある.
B診断
・腎・尿路損傷の診断には造影CTが最も有用である.動脈相で腎動脈や分枝の損傷を,実質相で腎実質の損傷を評価できる.
・全身状態が許せば排泄相の撮影により尿路の溢流を評価可能で,さらに遅いphaseの撮影により膀胱損傷の有無を評価できる.
・腎外傷の損傷分類には,腎実質の損傷形態に加え腎周囲血腫・尿漏の拡がり,腎茎部血管損傷の有無を評価項目とする日本外傷学会腎損傷分類2008(JAST分類2008)が用いられる.
・尿道損傷の診断には逆行性尿道造影を行う.
◆治療方針
A腎外傷
1.保存的治療
循環動態が安定している場合は,肉眼的血尿が消失するまでベッド上安静による保存的治療とする.腎実質損傷の程度に応じて受傷2~4日以内にrepeat CTを実施する.
2.緊急開腹手術
循環動態が不安定な場合は開腹止血術の適応だが,合併