今日の診療
治療指針

骨盤骨折
pelvic fracture
伊藤雅之
(福島県立医科大学特任教授・外傷再建センター(福島))

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治療のポイント

・高エネルギー外傷では致命的になるため超急性期に輸血・止血・固定の実施が大切である.

・骨盤輪骨折は骨盤安定性を診断し治療方針を決定する.

・不安定型・転位の大きな骨盤輪骨折は観血治療を急性期に考慮する.

 以下,特に骨盤輪骨折について記載する.

◆病態と診断

A病態

・高エネルギー外傷では多発外傷を合併することも多く,大量出血が死亡原因となる.

・高齢化に伴い低エネルギー外傷で受傷する脆弱性骨盤輪骨折(FFP:fragility fractures of the pelvic ring)が増えてきている.

・骨盤後方構成体の破綻度合いによって不安定性(重症度)が決定される.

・腸骨部が,内旋し骨盤容積が減じる側方圧迫型,外旋し骨盤容積が増加する前後圧迫型(オープンブック),垂直方向に転位する垂直剪断型に分けられる.

・骨盤容積の増加により内出血量が増加するため,側方圧迫型より前後圧迫型のほうが重症で,垂直剪断型では内臓器損傷を合併しやすく,さらに重症化する.

B診断

・転倒・交通事故や高所墜落など外傷強度と外力方向の問診でおおよその重症度を推測する.

・FFPでは,単なる恥骨骨折に思われても殿・腰部痛の有無で後方構成体損傷を推測する.

・用手テストで骨盤不安定性を診断することもあるが,内出血を助長するので注意する.

尿道・腟・直腸損傷は骨盤輪開放骨折となり重症化する.

・血液検査:貧血の有無を即判断し,緊急輸血のため血液型の同定は最優先される.

・尿検査:血尿は腎臓以下尿道までの損傷を疑う.尿道口からの出血,フォーリーカテーテル挿入困難などは逆行性膀胱造影を行う.

・X線:蘇生中は胸部と骨盤単純X線正面像を撮影し,恥骨の離開,骨盤輪破綻の程度,骨盤容積の拡大,第5腰椎横突起骨折(骨盤輪不安定症を示唆),仙腸関節脱臼などで重症度を判断する.インレット・アウトレット像は転位を明らか

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