今日の診療
治療指針

四肢開放骨折
open fracture of the extremities
渡部欣忍
(帝京大学教授・整形外科学)

頻度 情報なし

治療のポイント

・重度開放骨折は,難治性であり専門施設での治療が必須である.

・重度開放骨折は,DCOで対応する.

・軟部組織欠損は,局所あるいは遊離(筋)皮弁で再建する.

◆病態と診断

A病態

・「創」は皮膚の開放性損傷を,「傷」は皮膚の非開放性損傷を意味する.

・骨折部が創を通して外界と交通している骨折を開放骨折とよぶ.

・交通外傷や墜落外傷などの高エネルギー外傷で発生することが多いが,皮膚・皮下組織が脆弱な高齢者では低エネルギー外傷でも発生する.

・非開放骨折に比べて,感染,遷延癒合,偽関節などの合併症が多く,四肢切断のリスクも高い.

・軟部組織損傷の重症度は,Gustilo type Ⅰ(創が1cm未満),Ⅱ(創が1~10cm),Ⅲ(創が10cm以上または広範な骨膜剥離を伴う)に分ける.Type Ⅲは,さらにⅢa(汚染はひどいが,軟部組織で骨折部を被覆可能),Ⅲb(汚染がひどく,かつ軟部組織で被覆不能),Ⅲc(修復すべき血管損傷を伴う)に細分類する.

・Gustilo type Ⅲ以上の骨折や皮膚・皮下組織が脆弱な高齢者の開放骨折は難治性であり,経験が豊富な専門施設以外では治療すべきではない.

B診断

・骨折の診断は,単純X線像とCT画像で容易である.

・直視下に骨折部を創から確認できれば開放骨折であるが,確認できない場合は手術時に診断を確定する.

・軟部組織再建の方法はGustilo ⅢaとⅢbで異なるが,その鑑別診断は難しい場合がある.

◆治療方針

A初期治療

 可及的早期に抗菌薬の投与を開始する.創傷の状況を共有するために写真を撮影する.圧迫止血で制御できない出血は,止血帯を使用し,すぐに手術室へ患者を運ぶ.

 手術室では,全身麻酔あるいは区域麻酔で開放創の状態をしっかりと評価する.局所洗浄とデブリードマン(血行のない壊死組織の外科的切除)を行う.デブリードマンは,受傷から12~24

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