今日の診療
治療指針
救急
手技

圧挫症候群
crush syndrome
本間正人
(鳥取大学教授・救急・災害医学)

頻度 (平時にはあまりみないが災害時にはよくみる)

治療のポイント

・重量物に長時間挟圧されたエピソード,患肢運動知覚麻痺,黒~赤褐色の尿(ポートワイン尿)が診断のポイントである.

・救出前からの生理食塩液の輸液による尿量の維持,高K血症の治療,致死性不整脈に対するAEDの準備が必要である.

・低容量の補正,尿のアルカリ化,高K血症の治療を行う.急性腎不全,高K血症には血液浄化療法が必要となる.

◆病態と診断

A病態

・横紋筋が長時間圧迫・解除されることにより生じる病態である.

・虚血再灌流により筋細胞膜が障害され,筋細胞内へのNaと水分の移行による筋浮腫と,細胞内から血管内へのK,ミオグロビン,CK,各種サイトカインの流出により全身炎症反応や臓器不全をきたす.

横紋筋融解,低容量性ショック,虚血再灌流,コンパートメント症候群,急性腎不全,高K血症,致死性不整脈を包括する症候群である.

B診断

1.重量物に長時間挟圧されたエピソード

・地震による家屋の倒壊による重量物の下敷きや,車両や機械に長時間挟まれることなど,災害現場で発症するが,意識障害を伴った長期臥床や,狭所,例えばトイレ便器と壁の間への挟まれや,股関節,肩関節の異常屈曲により,家庭内でも同様の病態は発生する.横紋筋が長時間挟圧され虚血となりうるエピソードを聴取することが重要である.

2.患肢の皮膚所見と運動知覚麻痺

・患肢には圧挫痕,圧迫しても消退しない紅斑,皮下出血,紫色の変色(チアノーゼ),水疱形成,腫脹など多彩な皮膚所見を呈する.患肢は運動障害と知覚麻痺を認める.脊髄損傷とは異なり,肛門括約筋の随意収縮,肛門括約筋反射は保たれる.

3.黒~赤褐色の尿ポートワイン尿

・ミオグロビンの尿中排泄による黒~赤褐色の尿(ポートワイン尿)が特徴的である.血液検査ではK,CK,ミオグロビンが上昇する.

C重症度診断

 重症度は傷害を受けた横紋筋の体積

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?