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治療のポイント
・状態の悪い患者(ショック,意識障害など)の原因検索として血液ガス分析を行う.
・代謝性アシドーシスの原因検索としてアニオンギャップを用いる.
・併存する病態(ショックや高K血症)を併せて評価・治療する.
・代謝性アルカローシスの原因検索については病歴・薬歴も重要である.
◆病態と診断
A病態
・緩衝系および腎臓・呼吸器によって維持されている生体内のpHが有機酸の産生増加や排泄障害,塩基イオンの過剰排泄,外部からの酸性物質の過剰投与により酸性に傾くことを代謝性アシドーシス,HCO3- の産生増加や排泄低下によって塩基性に傾くことを代謝性アルカローシスとよぶ.平衡障害自体より,その原因や付随する病態への対応が重要であることが多い.
B診断
1.代謝性アシドーシス
a.患者のアニオンギャップ(AG)の確認
・患者のAG=Na+-(Cl-+HCO3-)が,基準値を超えているかを確認する.なお,患者のAlbが1g/dL低下するごとにAGの正常値は2.5mEq/L低下することに留意する.
b.AGが増加している場合
・主にケトアシドーシス,腎不全,乳酸アシドーシス,薬物中毒の4つが考えられる.
・AG増加を起こす薬物にはエチレングリコール,メタノール,アスピリン,テオフィリンなど特異的な治療が可能な薬物が含まれることに留意する.
c.AGが正常の場合
・下痢,尿細管性アシドーシスなどが原因として考えられる.
・尿細管性アシドーシスの原因は多岐にわたるが,救急・ICUにおいては薬剤性,腎障害を考慮に入れる.
2.代謝性アルカローシス
・急性代謝性アルカローシスの原因には,嘔吐,利尿薬(フロセミド)の投与,低K血症があり,病歴や薬歴を確認することが重要である.
◆治療方針
A代謝性アシドーシス
1.循環虚脱がある場合
細胞外液の輸液を行う.
Px処方例
乳酸リンゲル液(ソルラクト薬) 1回500mL 点
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