頻度 〔日本麻酔科学会の偶発症例調査(2009~2011年)によると,危機的偶発症による死亡率(全周術期死亡率:術後30日以内)は3.93/1万症例,麻酔関連周術期死亡率は0.07/1万症例であった〕
GLWHO安全な手術のためのガイドライン2009
GL術中心停止に対するプラクティカルガイド(2022)
治療のポイント
・狭義の麻酔事故のほとんどは,酸素が適切に患者体内に投与されていなかったことが原因である.ゆえに術中の偶発的トラブルに対しては,酸素が確実に患者に投与されているかどうか,患者が適切な呼吸様式であるかを確認したうえで,個々の偶発症に対する治療を行う.
・麻酔診療上のいわゆる医療事故に対しては,救命処置がされたのちに,2015年10月より施行されている医療事故調査制度に基づいて対処する.
本項では,麻酔中の偶発症を含め解説する.
A診断
・術中の心停止の原因としては,気道の閉塞,人工呼吸器の異常,重症喘息や低肺機能による低酸素症,術前からの低心機能の悪化,心筋梗塞,心タンポナーデ,緊張性気胸,麻酔薬の過量投与,脊髄くも膜下麻酔後の高位神経ブロック,麻酔薬中毒,アナフィラキシー,肺塞栓症,悪性高熱症などが想定される.
・以下に主な術中合併症の診断法を記す.
1)術中心筋虚血:心電図ST上昇または低下,術中心エコー(経食道心エコーを含む)にて心室壁運動低下,血清トロポニン上昇.
2)術中肺梗塞:SpO2,PaO2,ETCO2 低下,術中心エコーにて右室負荷像.
3)術中気胸:呼吸音低下,胸郭運動低下,胸部X線気胸像.
4)術中大動脈解離:術中心エコーにて大動脈にフラップ確認.
5)術中肺水腫:SpO2,PaO2 低下,術中心エコーにて左室壁運動低下,術中胸部X線にて肺うっ血像.
◆治療方針
手術の進行具合により治療が制限されることが多い.診断が確定して専門的治療を受けられるまで,もしくは診断