頻度 あまりみない
GL悪性高熱症患者の管理に関するガイドライン2016
治療のポイント
・悪性高熱症(MH)は全身麻酔中に起こるまれな疾患であるが,いったん発症すると急激に進行し死に至るため,早期診断と治療が必須である.
・疑った場合は,緊急事態を宣言し原因薬剤を中止し,ダントロレンの投与と対症療法を開始する.
・発症のリスクのある患者の手術はICUを含めた高次治療施設が望ましい.
◆病態と診断
・常染色体優性遺伝性疾患で,全身麻酔症例10万件に1~2件の頻度で発症する.
・素因のある患者が起因薬剤(揮発性吸入麻酔薬や脱分極性筋弛緩薬)に曝露すると,骨格筋細胞内の筋小胞体から筋細胞内へCaが異常放出し,筋収縮の異常持続と代謝の異常亢進,筋破壊が進行する.
・症状は急激な体温上昇,頻脈,不整脈,PaCO2 上昇,PaO2 低下,アシドーシス,K+・GOT・GPT・LD・CKの上昇,ミオグロビン尿で,進行すると多臓器不全となり死亡する.
◆治療方針
早期発見,早期治療が原則.疑わしい場合は確定診断を待たずにダントロレンを投与する.基本は①原因薬剤を中止し緊急事態を宣言する,②ダントロレンの投与,③対症療法である.
Aダントロレンの投与
Px処方例
ダントロレン(ダントリウム薬)注(20mg/V) 1Vに注射用水60mLを注入し,透明になるまで溶解(難溶性) 1.0~2.0mg/kgを15分で単独ルートで静注 症状が安定するまで(EtCO2 の低下,筋硬直改善,心拍数安定).総量は最大7.0mg/kgまで投与
ダントロレンの院内備蓄は限られているため,近隣施設に要請する.
B対症療法
1)38℃目標に体温冷却.
2)不整脈治療:洞性頻脈と心室性不整脈.なお,不整脈治療にCa拮抗薬は使用しない(ダントロレンとの併用で致死的高K血症の可能性).
3)代謝性アシドーシスの補正.
4)電解質補正:高K血症に対して.
5)