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開胸心マッサージ [■心肺蘇生・循環系の緊急処置]
☆☆☆
open cardiac massage
大村健史
(徳島県立中央病院・救急外科・外傷センター長)

 開胸心マッサージは,心停止あるいは心停止に至る直前の患者に対する蘇生的処置の1つである.古くは1800年代後半に穿通性胸部外傷に対して行われた報告があり,その後内因性心停止に対しても適応が広がった.1960年代初頭に閉胸心マッサージ(現在の胸骨圧迫)の有効性が報告されて以降は,主に外傷での蘇生に限られるようになった.閉胸心マッサージに比べて,循環血液量,冠動脈灌流量は高めに維持されるが,循環が破綻した原因(出血,心タンポナーデなど)に対する治療が行われなければ救命にはつながらない.蘇生的開胸術での一連の処置の1つととらえておくべきである〔蘇生的開胸時に行われるその他の治療例:緊張性気胸の脱気,心タンポナーデに対する心膜切開,体内式除細動,胸部大動脈遮断,胸腔内出血(心損傷,肺損傷,胸部大血管損傷,胸壁損傷)の止血,空気塞栓の治療〕.

A適応

 蘇生的開胸術の適応については,2012年にWestern Trauma Association(WTA)アルゴリズム,2015年にEastern Association for the Surgery of Trauma(EAST)のガイドラインがそれぞれ発表され,一般にこれらが普及している().脈拍を触知しない心臓電気活動状態であっても,鋭的穿通性外傷に対する推奨はあり,確認されたい.

 開胸心マッサージは,外傷心停止に対する最終手段であるが,患者にとって侵襲が非常に大きく,医療リソースを大量に消費する.さらに,肋骨骨折端による医療者のケガ・血液曝露も問題となるため適応判断が重要である.呼気終末二酸化炭素分圧(ETCO2)測定や心臓超音波検査が心拍再開率や蘇生率と関連しており,上記ガイドライン推奨度に加えて適応の参考にしてもよい.

 外傷以外での適応としては低体温症,肺塞栓症による心停止,胸郭の高度変形例や,開胸がすでに実施された術中の

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