治療のポイント
・気管挿管法はチューブを気管内に留置する確実な気道確保の手段であり,救急診療に携わる医師にとって習得すべき必須の手技である.
・Macintosh型喉頭鏡を用いた直視下気管挿管が一般的であるが,近年ではビデオ喉頭鏡を使用する頻度が増加している.
◆病態と診断
A適応
・呼吸不全,心肺停止,意識障害(意識レベルがGlasgow Coma Scaleで8点以下),ショック,窒息などの重症患者を対象とすることが多い.その他,吐血や嘔吐で誤嚥のリスクが高い場合や,顔面外傷・気道熱傷・急性喉頭蓋炎に対して気道閉塞の予防目的で行う場合もある.また,全身麻酔を要する手術時の呼吸管理として実施される.
B気管挿管の経路
・経口挿管が一般的である.経口挿管では,気管チューブは口腔,咽頭,喉頭を経由して声門から気管に挿入される.挿管を確実に行うためには,これらの経路の軸が直線となり,声門を直視できることが必要である.枕で患者の頭部を挙上して頸部を軽く後屈させる体位(sniffing position)にさせると,上位頸椎が伸展し,下位頸椎が屈曲するため,咽頭軸と喉頭軸のなす角度が小さくなる.さらに,喉頭鏡で喉頭展開を行うことによって声門の直視が可能になる.ただし,頸椎損傷が疑われる患者ではsniffing positionは禁忌であり,正中中間位として頸部を固定する.
◆治療方針
A経口気管挿管
1.準備
1)バッグ・バルブ・マスク,または麻酔器.
2)酸素.
3)各種モニター(心電図,パルスオキシメーター,血圧計).
4)吸引装置と吸引チューブ.
5)喉頭鏡:ブレードが曲型のMacintosh型喉頭鏡もしくは直型のMiller型喉頭鏡.ブレードサイズは成人ではNo.3もしくはNo.4,小児ではNo.1もしくはNo.2を使用.
6)気管チューブ:成人男性では内径が7.5~8.5mm,成人女性では内径が7.0~