GL酸素療法マニュアル(2017)
◆病態と診断
・室内気では酸素飽和度が維持できない場合に酸素投与が必要となる.
・Ⅱ型呼吸不全ではCO2 ナルコーシスに注意する.
◆治療方針
本項では人工呼吸器を使用した機械的陽圧換気までの範囲を対象とする.
気管挿管やゴムバンドでマスクを装着しないと,気道密閉が不完全であるため,吸気時には投与した酸素以外に周囲の空気を必ず吸い込む.模式的に1回換気量500mL,吸気時間1秒間と仮定すると,吸気流量は30L/分となる.これに酸素投与をX[L/分]付加すると,吸入酸素濃度Y[%]の理論値は,
Y={(30×0.21+X)×100}/(30+X) [%]
となるはずである.ところが,酸素流量と周囲から引き込む空気の比率はさまざまであり計算式は目安に過ぎない.実際には酸素を投与して目的の治療効果が得られるかどうか,患者の状態をよく観察して投与方法を修正する必要がある.
A鼻カニューレ
外鼻孔から投与する樹脂製の酸素供給チューブ.器具が小さいため装着の煩わしさが少ない.流量が増大すると鼻腔の乾燥が不快感を招くため,3~5L/分が上限である.口呼吸の場合は効果が得られない.
B簡易酸素マスク
ゴムバンドを耳にかけて口と鼻を覆うマスク.5~10L/分を投与できるが,経鼻カニューレよりは煩わしい.マスク内に残存した呼気を再呼吸する可能性があるため,使用説明書には5L/分以上の流量で使用するよう記載されている.
Cリザーバー付き非再呼吸性マスク
高流量酸素をためておくリザーバーを接続したもの.高濃度酸素投与が可能である.
D開放型酸素マスク
酸素マスクがスケルトン構造になっていて低流量でもマスク内に呼気が残存することがなく,高流量時はベンチュリー効果によって酸素濃度を維持できる,低流量から高流量まで1つで対応可能なマスク.
Eベンチュリーマスク
小口径のプラスチックバル